これらの活断層のうち、山地南縁に分布する断層は神戸市街地下に伏在していることが確実であり、最近行われた反射法地震探査によって、それらの連続性が次第に明らかとなりつつあるが、不明な点も多い。
一方、六甲山の隆起変動量は、大阪層群に挟まれている第1海成粘土層(Ma1)を鍵として、約100万年間に1000mの相対変位となっている。すなわち、約100万年前に堆積したMa1が、大阪湾底においては海底下500mに伏在していることに対して、山地部では標高500mに分布が確認されているためである。この変動量は、平均変位速度に換算すると1m/1000年となり、決して少なくないものである。
図1−4−1 六甲山地と周辺の活断層*)
本調査の対象としている六甲山地南東部地域には、図1−4−1に示したように、芦屋断層や甲陽断層などが分布している。これらの活断層のうち、芦屋断層は地形的に明瞭なリニアメントを形成しているが、断層線を横切って分布する高位−中位段丘面や崖錐面には、南西端部を除いて変位が認められていない。これに対して、甲陽断層は大阪層群を著しく変形させているとともに、低位段丘面をも変位させていることが明らかであることより、更新世後期以降における断層活動は顕著であるとされている。また、甲陽断層の南東側前縁には、段丘面を山側へ逆傾斜させるような変形に対して、西宮撓曲の存在が提唱されているが、その実体に関しては地質情報が少なく、まだ不明な点が多い。
以上より、当調査業務におけるおもな目的は、これらの活動的な甲陽断層や西宮撓曲などの断層活動性に関する情報を得ることである。
*)岡田篤正(1996):兵庫県南部地震の地震断層と六甲−淡路島活断層帯,兵庫県南部地震と地形災害,古今書院,p.28−63.