3−5−2 トレンチ調査結果

本地点では比高約2.5mの低崖が明瞭に認められることから,同地点でトレンチを掘削した(図3−5−1).

トレンチ法面のスケッチと写真を図3−5−2−1図3−5−2−2および図3−5−3−1図3−5−3−2に示す.

本トレンチ内に現れた堆積物を,層相,構造,色調などから,上位よりT層,U層,V層,W層に区分した.

T層は低崖の地形に沿って分布し,地形面直下の黒色土壌およびその下位の腐植質砂混じりシルト層からなり,黒色土壌中ににぶい黄橙色を呈する細粒の軽石がパッチ状に分布し,この軽石層は産状および分析結果から,樽前aテフラ(Ta−a:AD1739;新編火山灰アトラス,2003)に対比される.また,腐植質砂混じりシルト層から採取した試料の14C年代は,約1200y.B.P.〜約990y.B.P.の値を示す.

U層は腐植質な砂質シルト層からなる.南側法面の低崖基部において,一部,礫混じりとなる.本層の14C年代は約2410y.B.P.〜約2390y.B.P.の値を示す.

V層はローム質な砂層に腐植層を数枚挟在する.腐植層の14C年代は上位から,約3750y.B.P.,約4350y.B.P.,約4980y.B.P.および約6130y.B.P.の値を示す.

南北両法面において,本地点の低崖と調和的な東上がりの変形がW層で認められ,その変形から派生した断層がV層にまで達していることが確認された.U層は下位のV層をほとんどの部分において不整合で覆い,かつV層以下の変形とは明らかに異なる分布を示す.一部,南側法面の低崖基部付近におけるU層は,V層を整合的に覆っているように見える.この場所のU層は,淘汰の悪い礫混じり砂質シルト層である.このような不淘汰な層相は,断層変位後に形成されるプリズム堆積物に対比される可能性がある.

以上のことから,本トレンチにおける麓郷断層の最新活動時期は,V層堆積以降,U層堆積以前であることが確実である.その年代は14C年代から約3750年前以降,約2400年前以前となる.