3−4−2 ボーリング調査結果

平成14年度のP波反射探査測線に沿って測線を設け(図3−4−1),各深度30m,計8孔のボーリング調査を実施した.また,ボーリング・コアから試料を採取し,14C年代測定および火山灰分析を実施した.各ボーリングの柱状図を図3−4−2図3−4−3図3−4−4図3−4−5図3−4−6図3−4−7図3−4−8図3−4−9に示す.また,火山灰分析の結果を,図3−4−10図3−4−11に示す.ボーリング・コア観察結果,14C年代測定結果および火山灰分析結果に基づき作成した地質断面図を図3−4−12に示す.

ボーリング調査は,扇状地から沖積低地にかけて行われたため,南東側(山側)と北西側(盆地側)のコアでは層相が異なる.

山側の2孔,TN−1孔とTN−6孔は,径30〜50mmの亜円礫を主体とする礫層とシルト質砂層とが1〜2m毎に繰り返す.シルト質砂層には,斜交葉理や平行葉理が見られる(TN−6孔の深度21.50〜21.93mなど).

一方,盆地側の3孔,TN−7孔,TN−8孔およびTN−2孔は,主に砂層とシルト〜シルト質砂層の互層からなり,泥炭層や腐植質シルト層を頻繁に挟在する.礫層もまれに挟在するが,礫径は小さく細礫サイズであり,層厚も薄い.山側の2孔で見られたような大礫は認められない.

これらの中間に位置するTN−3孔やTN−5孔の層相は,砂層とシルト〜シルト質砂層の互層からなり盆地側のコアの層相に類似するが,標高150m以深では,礫質堆積物が卓越する傾向になり,山側のコアの層相に類似する.TN−5孔より山側に位置するTN−4孔では,砂層とシルト〜シルト質砂層の互層が見られるものの,泥炭層は認められず,腐植質シルト層の発達も悪い.

観察結果と火山灰分析結果から,TN−1孔の深度15.38〜15.45m付近,TN−3孔の深度15.83〜15.87m付近,TN−4孔の深度13.41〜13.54m付近およびTN−5孔の深度13.55〜13.58m付近で支笏降下軽石1(Spfa−1;42−44ka)に対比される細粒軽石が挟在する.TN−6孔の14.20m付近,TN−7孔の23.14m付近およびTN−8孔の21.92m付近でもSpfa−1が認められたが,混入が多く二次堆積物と考えられる.

なお,火山ガラスの形態は,繊維状あるいはスポンジ状といった軽石型火山ガラスが多いものの,バブル型も多く含まれ,一般的なSpfa−1の特徴とは異なる部分もある.

これらとR−1孔から得られたSpfa−1の深度22.5m付近を併せて対比を行うと,Spfa−1の鉛直変位量は約8mと推定される(図3−4−12).ここで,図3−4−10において黒破線で示したSpfa−1降下当時の推定堆積面は,隆起側で堆積層準が明瞭なTN−4孔とTN−1孔を利用している.ただし,最も隆起側(南東側)のTN−6孔を利用すると,変位量は小さくなる.しかし,TN−6孔におけるSpfa−1は現在の地形および直下の礫層の層相から,扇状地に堆積したと考えられるため,TN−1とTN−6との間の傾斜は,扇状地の堆積面を反映していると可能性がある.

Spfa−1より下位の層準で,TN−3孔より隆起側では礫層がみられたのに対し,TN−2孔より低下側では認められない.TN−4孔におけるSpfa−1直下の礫層上面深度から判断すると,20m以上の高度差が推定される.

14C年代測定の結果,約1万年前から約3万年前の値を得た(図3−4−12).測定した全てのコアで,年代の逆転やギャップがなく,本地点における堆積物,特に,扇状地礫層堆積以降の細粒堆積物は整合的に堆積したと考えられる.各コアで約1万年前の層準(あるいは相当する層準)を対比すると,図3−4−12における完新統基底と示した線で描くことができた.これをSpfa−1層準と同様に,堆積面を想定(黒破線)すると,変位量は約3mとなる.

今回のボーリング調査で得られた地質断面と,既存のS波反射断面資料を対比した(図3−4−13).地質断面におけるSpfa−1層準は反射断面における強反射部と一致し,少なくとも,TN−2〜TN−4間のSpfa−1の傾斜は反射断面からも裏付けられる結果となった.完新統基底は若干のずれはあるものの,強反射部とほぼ一致し,少なくとも,TN−2〜TN−4間の全体としての傾斜は良い一致をみる.扇状地礫層に相当する反射面は,地表面に水路がある付近では反射断面に乱れが生じているため各層準の正確な対比は困難だが,おおまかな堆積構造の傾斜は一致する.