ボーリング地点は,逆向き低崖を基準として北西側(相対的隆起側)にHN−2孔およびHN−3孔を,南東側(相対的沈下側)にHN−1孔,HN−4孔,HN−5孔を配置した.
ボーリング・コアは,全孔を通じて,径30〜50mmの亜角〜亜円礫を主体とする礫質堆積物からなる(HN−2孔の深度6.71〜7.45mなど).全般には,礫支持の礫層が卓越するが,一部には,泥質基質をもつ基質支持構造で,かつ逆級化構造をもつ,土石流堆積物の特徴をもつユニットもある(HN−5孔の深度10.90〜11.78mなど). 礫層間には,薄層理の砂層やシルト層など比較的細粒な堆積物が挟在し,平行層理など内部構造も見られる場合がある(HN−1孔の深度12.16〜12.39mなど).各孔間での,水平方向の岩相変化は著しく,詳細に対比することが出来なかった.ただし,HN−1孔の深度4.60〜5.43m,NH−4孔の深度5.56〜5.74mおよびNH−5孔の深度3.63〜4.01mに分布する泥炭層は,層相や分布高度から対比可能であり,本地区において唯一の鍵層である.
HN−1孔,NH−4孔およびNH−5孔のコア試料から,この泥炭層および同層準の材化石の14C年代値は3試料とも>44720y.B.P.であった(資料3参照).
また,肉眼観察で明瞭な層としての火山灰が認識できないことから,洗浄による火山灰の抽出を試みた(図3−3−9、図3−3−10、図3−3−11、図3−3−12).分析の結果,HN−4孔の深度5.50〜6.30m,HN−5孔の深度4.1〜4.5mで,堆積物から火山ガラスが多く検出された.ガラスの屈折率は,HN−4孔で1.496(n)付近にモードを持つ1.494−1.499(n),HN−5孔で1.496(n)付近にモードを持つ1.494−1.500(n)と,特徴的な低屈折率を示す.この屈折率と形成時代を考慮に入れると,これらの火山灰粒子は,洞爺テフラ(Toya;112〜115ka)を起源とするものであると考えられる.したがって,同種のガラスの検出限界の最深の深度が降灰層準に対比が可能と考えた.
同様に,HN−2孔の深度3.5〜3.6m,HN−3孔の5.15〜5.25mからも,1.497(n)付近にモードを持つ1.495−1.499(n)といった低屈折率の火山ガラスが検出された.ただし,ガラスの量は微量であり,検出限界を判断することは難しい.少なくともToya降灰以降に対比される.
HN−4孔の深度2.8〜2.9m以浅で火山ガラスが検出され,その屈折率が1.502(n)付近にモードを持つ1.500−1.503(n)であることから,支笏第1テフラ(Spfa−1;42〜44ka)に対比される.HN−2孔の深度0.5〜0.6m以浅で1.502(n)付近にモードを持つ1.498−1.503(n),HN−3孔の2.55〜2.65m以浅で1.501(n)付近にモードを持つ1.499−1.502(n)の火山ガラスが検出された.これは,支笏第1テフラ(Spfa−1;42〜44ka)に対比される ただし,HN−2孔は,耕作深に近い深度であることから,上部からの混入を否定できない.