3−2−2 富良野市東鳥沼地区
本地区は,麓郷断層の北部に位置し(図3−1−1),平成14年度にP波反射探査およびボーリング調査(R−1孔)が行われた地点である(図3−2−1,図3−2−2).P波反射探査では明瞭な断層は確認されなかったが,標高−200mの反射面が十勝熔結凝灰岩の上面に対比された(図3−1−2).本地区の上盤側には,十勝熔結凝灰岩からなる火砕流の堆積面(麓郷面)が,標高300m〜400mの高度で比較的平坦な地形をなす.このことから,麓郷断層付近での高度差は,500−600m程度と推定される.本地区におけるS波探査と既存ボーリング資料の位置と断面図をそれぞれ図3−2−2および図3−2−3に示す.P波反射法地震探査では,地震探査測線に直交する道道上富良野・旭中富良野線付近を境として,上盤側で地形に平行であった反射面が,西に(盆地側に)反射面が傾動している.この反射面の形状は,S波反射法地震探査でも同様であり,R−1孔の深さ22.5m付近のSpfa−1テフラ層準付近の反射面群も,この撓曲変形に参加している可能性が高い(図3−2−3).また,既存ボーリング資料から,道道上富良野・旭中富良野線より西側では細粒な堆積物が優勢であるのに対し,東側では扇状地堆積物と考えられる粗粒堆積物が大半を占めるというように,地質が著しく変化する.このことから,ベベルイ川〜道道上富良野・旭中富良野線間に存在が推定される撓曲構造が存在する可能性が高い.本地区は,Spfa−1を鍵層とした変位量の推定が期待できること,また,R−1孔の調査から数千年前〜数万年前の泥炭層を鍵層とした変位量の推定が期待できる.