4−1−6 忠類川中流糸櫛別地区

忠類川北岸枝沢を主体とした柱状対比図(図3−1−26)では東方へ20°前後の傾斜で傾く幾品層堆積岩類の上位に斜交不整合関係で中位面堆積物が重なる様を観察できる.この中位面堆積物は屈斜路火砕流堆積物W(Kpfl−W)を鍵層として含み,同堆積物を追跡すると,見かけ上東南東方向に35.4/1,000の勾配が認められ,このような勾配は忠類川の河川勾配を考慮しても大きく,KPfl−W堆積(115〜120ka)後に古多糠断層の活動による変位の進行が考えられる.なお,md−12地点では,Kpfl−Wを主体とする中位面堆積物(厚さ5m程度)の上位に低位面1堆積物とローム・火山灰層が重なる.

忠類川沿い(一部北岸枝沢)についての柱状対比図(図3−1−27)では忠類・越川・幾品層の直立・逆転帯〜緩傾斜波状構造部の上位に中位面堆積物が斜交不整合関係で重なるが,北岸に沿うほぼ東西の方向では中位面1・中位面堆積物ともに10/1,000程度の傾斜できわめて緩い勾配である.上記で示したようにKpfl−Wを基準にすると南南東方向に35.4/1,000の勾配で極めて大きい.

本地区には山地際に中位面1から区別され,高位面が分布する.高位面堆積物そのもの露頭は観察できていないことから,その実態は不明であるが,地形面そのものは東〜南東方向へ強く傾動している.なお,越川・幾品層の直立・逆転帯は古多糠川沿いでも観察できる.

[平成15年度浅層反射法地震探査西北標津測鮮結果と西古多糠地区調査結果の比較]

平成15年度調査では古多糠断層を横断するという意味で本地区・西古多糠地区と共通する本地区内の西北標津測線(図4−1−1;忠類川に沿う国道244号線沿い)で浅層反射法地震探査が実施されている.探査結果については平成15年度調査で既に一定の解釈を行っていたが,同じ古多糠断層南部に関係する事から,ボーリング・ピット調査を行った西古多糠地区の調査結果の示す浅部構造と,反射法地震探査の示す深部構造との関連を検討しながら改めて解釈を行う.ただし,測線と西古多糠地区とは6kmあまりの距離がある.

@調査地の地表付近に分布する地質構成の観点から判断すると,今回の調査地区(ボーリング・ピット箇所)は反射断面のCMPLoc100〜160付近に位置づけられる.すなわち,中位段丘堆積物が海側(東方)に向かって急激にその層厚を増し,その基盤には幾品・陸志別層(鮮新統)と越川層(上部中新統)が分布する.一方で,調査地周辺の露頭調査から判断して,調査地は次の点から反射断面のCMPLoc240〜320付近に位置づけられる.

A薫別川沿いの忠類層・越川層はほぼ直立した地質構造を持っており,これはF4とF5にはさまれた反射面の連続性が損なわれた範囲に相当すると考えられること(このような構造は、忠類層・越川層分布域での顕著な線状の組織地形に反映されている).

B薫別川沿いに分布する幾品層は小規模な断層によって転移しながら,山側(西側)へ向かってその傾斜が徐々に大きくなること.

C高位面と高位段丘堆積物はほぼ一様に10°前後の緩傾斜で海側(東側)へ傾斜している.

表4−1−1 西古多糠地区ボーリング・ピット調査の総合層序・解釈表

図4−1−1 西古多糠地区ボーリング・ピット調査の地質断面解釈図

表4−1−2 北川北地区ボーリング・ピット調査の総合層序・解釈表

図4−1−2 北川北地区ボーリング・ピット調査の地質断面解釈図

表4−1−3 北武佐地区ボーリング・ピット調査の総合層序・解釈表

図4−1−3 北武佐地区ボーリング・ピット調査の地質断面解釈図

表4−1−4 養老牛地区ボーリング・ピット調査の総合層序・解釈表

図4−1−4 養老牛地区ボーリング・ピット調査の地質断面解釈図