西古多糠地区の3箇所のピットの層序は,層相とはさまれるテフラから次のように区分できる.
上部火山灰・ローム層(UVL):Ts層(耕作土)・Ma−l層(Ma−l降下軽石)
下部火山灰・ローム層(LVL):LVLlc層(ローム質粘性土)・LVLs層(砂)・LVLs−g層(礫混り砂)・LVLg層(砂礫)・LVLc層(インボリューションの著しく発達する粘土が主体)・LVLsc層(シルト質砂)
各ピットの対比図を作成した結果,次の諸点が明らかになった.
@ 活構造に伴う地層の変形は認められない.
A LVLlc層より下位の地層は凍結擾乱作用を受けており,最終氷期に堆積した地層である可能性が高い.
B 最も東に位置するピット(S04−Ko−P3)でのみ,LVLg層が出現する.
以下,上位から順に各層の概要を記す.
@)上部火山灰・ローム層(UVL)
Ts層(耕作土):草根が混在する黒褐色の耕作土(腐植土)からなる.所々,Km−1fとみなされる径1〜3cm程度の橙色の軽石が散在する.耕作による攪拌を受け,下位のMa−l由来の軽石層のブロックが混在する部分が見られる.
Ma−l層(Ma−l降下軽石):径1〜3mm程度の安山岩岩片を混在する軽石からなる.橙褐〜黄褐色を示し,下位ほど橙色味が強い.軽石は風化が進み,やや丸みを帯びる.下部の10cm程は逆級化し,それより上部は正級化する.所々,基底に層厚1cm程度の青灰色の細粒火山灰を伴う.最上部は土壌化が進み,上位層へ漸移する様に見えるが,の腐植土が充填する根跡(径2〜5cm程度)が目立つ.
A)下部火山灰・ローム層(LVL)
LVLlc層(ローム質粘性土):黄灰色を呈すローム質粘性土からなる.軽石・安山岩の亜角〜亜円礫が点在し,全体に無層理・塊状である.腐植土が充填する根跡が認められる.
LVLs層(砂):暗褐灰〜暗灰色を呈す比較的淘汰の良い細粒砂からなり,所々シルト岩・緑色凝灰岩・軽石の亜円〜亜角礫が点在する.一部砂礫がレンズ状にはさまれる.分布がレンズ状で,下位層との境界が不規則であることから,凍結擾乱作用の影響を受けている可能性がある.
LVLs−g層(礫混り砂):淡褐灰色を呈す礫混り細粒〜中粒砂からなる.シルト岩・緑色凝灰岩・軽石の亜角〜亜円礫(最大径2cm程度)が混在し全体に不淘汰である.一部,砂礫・粘土をレンズ状にはさむ.S04−Ko−P1・P2では下部はインボリューションで擾乱されている.
LVLg層(砂礫):S04−Ko−P3でのみ確認したが,褐灰色を呈す砂礫からなる.礫はシルト岩・緑色凝灰岩・軽石の亜角〜亜円のもの(径5〜20mm程度)が主体で,基質は不淘汰な細粒〜中粒砂からなる.礫の配列には不明瞭だがインブリケーションが認められる.凍結擾乱の影響はない.
LVLc層(粘土・砂・スコリア質砂・有機質砂):淡灰〜淡褐灰色を呈する粘土が主体で,細粒砂・スコリア質細粒砂・有機質砂がはさまれる.粘土は塊状均質で粘性が強く,はさまれる砂は比較的固結が進む.全体にインボリューションがで著しく擾乱されており,細分することは困難である.
LVLsc層(シルト質砂):淡褐灰色を呈すシルト質細粒砂からなる.シルトの薄層がはさまれ,所々に凝灰岩・シルト岩の亜円礫(最大径10cm)を含む.インボリューションで凍結擾乱作用の影響を受けている.
[ 試料分析]
3つ並ぶピットの中間のもの(S04−Ko−P−1)でMa−lの可能性のある降下軽石層より試料(S04−Ko−P−2)を採取し,火山灰分析を行った(V.2の図3−2−5,巻末資料4).分析結果の火山ガラス・斜方輝石の屈折率の最頻値および他の記載岩石学的特徴を既往資料(町田・新井 編,2002;中村・平川,2003)と比較検討すると,Ma−l相当であると同定できた.
表3−3−2 西古多糠地区ピット調査の層序表
図3−3−4 西古多糠地区ピット調査の諸元
図3−3−5 S04−Ko−P1ピットスケッチ・写真展開図
図3−3−6 S04−Ko−P2ピットスケッ・写真展開図
図3−3−7 S04−Ko−P3ピットスケッチ・写真展開図
図3−3−8 西古多糠地区ピット対比図