調査方法:
@放射性炭素年代測定
放射性炭素年代測定法は主に生物遺骸中の放射性炭素14C濃度が,生物の死後,時間と共に減少する(半減期:5,730年)ことを利用した年代測定法で,現在から数万年前までの間の年代測定法として広く利用されている.測定試料は木材・炭・貝殻・泥炭・腐植土等で,同位体比は試料中の14C濃度・試料の量から放射能計測(β線計数法)あるいは加速器を用いた質量分析器(AMS法)で測定される.本業務では14Cの濃度・試料の量・測定年代の精度等を考慮し,全測定はAMS法で実施した.
放射性炭素年代は同位体比を測定し下式から算出される.
試料採取においては試料のコンタミネーションを避けるため,素手で鋼製のスコップ等を用い試料を採取し,植物の根等の混入物を取り除いた後,アルミホイルに包みチャック付のビニール袋に入れて保存した.
A火山灰(テフラ)分析
テフラ(火山噴出物のうち爆発的噴火で地表に噴出された破片状の物質で降下物,火砕流堆積物を含む;火山灰・軽石・火砕流堆積物等)は,火山の爆発的噴火によって地表にもたらされ,瞬時に広域に広がり堆積する性質を持っている.個々のテフラは噴出形態や噴出した火山のマグマの組成等に起因し,固有の特徴(火山ガラスの形態・火山ガラスの屈折率・鉱物組成等)を示す.中には日本列島全域に分布するテフラも知られており,遺跡調査等で貴重な時間指標として活用されている.火山灰分析ではテフラを対象に岩石レベル(組織・鉱物組成),鉱物レベル(形態・屈折率)の分析を行い、これらの特徴の組み合わせ及び層序から既知のテフラと対比・同定を行った.
Bフィッショントラック年代測定
ウラニウム238U原子核の自発核分裂現象を利用した放射年代測定法で,高温中で生成した鉱物やガラスの冷却時に自発核分裂で生じた鉱物中の単位体積当りの飛跡数が,試料中のウラン濃度(238U原子核密度)に比例することを利用している.ウラン濃度は原子炉内で一定量の熱中性子を照射して生じた235Uのフィッショントラック密度を測定し,これと238Uとの同位体比(一定)から換算して求める.測定にはジルコン・アパタイト等の鉱物が対象となる.本業務では試料中のジルコンを用いて測定を行った.フィッショントラック年代は得られた自発トラック密度・誘導トラック密度・標準ガラスのトラック密度を測定し,下式から算出した.