(6)忠類川中流糸櫛別地区

空中写真判読の結果,次の諸点が明らかになった.

@5面の段丘面(高位面:T1,中位面1:T2−1,低位面1:T3−1,低位面2:T3−2,最低位面:T4)が認められる.

A高位段丘面が忠類川の南北両岸側に分かれて山地際に分布するが,東南東〜南東への傾動が認められる.

空中写真判読結果を考慮に入れ,現地で地形地質精査を行った.その結果を精査図として図3−1−25に示した.忠類川本流沿いとその北岸枝沢の露頭柱状対比図を図3−1−26図3−1−27に,地形状況と露頭の写真集を図3−1−29図3−1−30にまとめた.

調査結果の要点は以下のとおりである.

@本地区の地質(層序)は下位より,忠類層(Ch;緑色変質した火砕岩・火山性堆積岩類),越川層(Ko),幾品層+陸志別層(Ik+Ko),高位面堆積物(T1d),中位面堆積物(T2d),低位面1堆積物(T3−1d),低位面2堆積物(T3−2d),最低位面堆積物(T4d),現河川氾濫原堆積物(Ad),新期の火山灰・ローム・腐植層である(図3−1−26図3−1−27).

A新第三系の忠類層・越川層・幾品層は西古多糠地区と同様に北東−南西方向に延びた幅約1kmの直立・逆転帯(地質断層としての古多糠断層)を形成している.幾品・陸志別層は忠類川沿いでは横牛川の合流点付近から下流で急激に緩い傾斜構造へ移行し,一部で波状にうねりを見せている.北岸枝沢を含めて,礫質岩・火山性砂岩泥岩を主体とした緩傾斜構造の幾品・陸志別層(図3−1−26図3−1−27)については中位面堆積物を含め,古期の段丘堆積物ではないかという可能性が考えられたが,緩傾斜構造部の岩相が直立・逆転帯からの移行部(急傾斜帯)に類似すること,含貝化石の浅海相が認められることなどから両層と判断した.

B高位面堆積物は西古多糠地区のような直接に観察できる露頭は見つけられなかったので,詳しい構成は分からないが,同面の傾動から東南東〜南東への傾斜が予想される.

C中位面堆積物は一般には礫〜砂礫相であるが,北岸枝沢と忠類川の一露頭では屈斜路火砕流堆積物W(Kpfl−W)の溶結凝灰岩を鍵層として含んでおり(図3−1−27),同堆積物を追跡すると,見かけ上東南東方向に35.4/1,000の勾配がみとめられる.このような勾配はこの付近の河川勾配が14/1,000程度であることから考えても大きく,古多糠断層の活動による変位の進行が考えられる.