@4面の段丘面(中位面1:T2−1,中位面2:T2−2,低位面1:T3−1,低位面2:T3−2,最低位面:T4)が認められる.
A山地際には北東−南西方向の地形変換のリニアメントが認められる.一方,ボーリング・ピット調査予定箇所付近のリニアメントは非常に不明瞭である.
B調査地のうち標津川の北東側には北へ湾曲した,北から南へ緩く傾斜するような地形的特徴を示す.
空中写真判読結果を考慮に入れ,現地で地形地質精査を行った.その結果を精査図として付図2−4にまとめ,その縮図版を図3−1−14として本文中に示した.本地区内の露頭柱状図集と標津川沿いの露頭・ボーリング柱状対比図を図3−1−15・図3−1−16に,地形状況と露頭の写真集を図3−1−17にまとめた.
調査結果の要点は以下のとおりである.
@本地区の地質(層序)は下位より,幾品層(Ik;凝灰質砂質泥岩・砂岩・礫岩・軽石凝灰岩・火山性砂礫岩),中位面堆積物(T2d;),低位面1堆積物(T3−1d),低位面2堆積物(T3−2d),最低位面堆積物(T4d),現河川氾濫原堆積物(Ad),新期の火山灰・ローム・腐植層である.これらのうち幾品層は忠類層,越川層,奥蘂別集塊岩層,などと一部同時異相の関係になる可能性があり(知床基部地域の地質図幅毎の地層の扱いの整理は現状では困難),30°前後(一部で50°あまり)南東傾斜のやや急な傾斜構造をとる.中位面堆積物の構成物として屈斜路火砕流堆積物W(Kpfl−W)が標津川沿いで溶結凝灰岩層として発見された(図3−1−15・図3−1−16・図3−1−17・図3−1−32・図3−1−33).中位面2は摩周軽石流堆積物により平坦化した中位面であり,その分布範囲では一般に新期の火山灰・ローム・腐植層中に同堆積物をともなう.
A地形面,特に中位面1・2に当初,一見撓むような部分が認められたが,段丘面の違い(段差部)の可能性が高いと見なされた.“荒川−パウシベツ川間断層”は山地(幾品層で形成)とその全面の台地(中位面1)との地形変換線である可能性が高い.