4−2 断層の変位量および平均変位速度
活断層研究会(1991)などでは,第四紀に繰り返し活動していることが明らかでありこれからも活動する可能性が高い断層を「活断層」と呼んでいる.しかし実際には活断層研究会(1991)の定義では活断層とされる断層についても,過去十万年間程度の長期にわたって活動の証拠がないものも認められる(北海道,1999).また,活断層が生じる要因である広域テクトニクスも,第四紀を通じて決して一様ではない可能性が指摘されている(瀬野,1987など).そのため近年では,国土地理院による定義「最近数10万年間に、おおむね千年から数万年の間隔で繰り返し動いてきた跡が地形に現れ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層」や北海道(2002)による定義「後期更新世以降に活動した可能性が高い断層」が活断層の定義として利用されることが多い.以下では,北海道(2002)の定義に基づき,後期更新世以降に活動した可能性が高い断層を「活断層」,後期更新世以降の活動が明らかでない断層を「第四紀断層」,第四紀の活動が認められないものを「地質断層」として,十勝平野断層帯の各断層について活動度の評価を行う.なお、稲穂断層、音更川−札内川断層、豊岡東断層、稲士別断層および緑が丘断層については、活断層ではないと判断されたため、活動度の評価は行わない。また、10万年より古い地形面については、上旭ヶ丘火砕流に覆われるNa−t2面以外は基本的に海成段丘アトラスによる年代論を採用しているが、あくまで推定値であり放射年代値等で支持されているわけではない。このため、これらから求められた平均変位速度もまた概算値だが、オーダーが変わることはないであろう。