地層・構造記載)
Tp5−1
Tp5−1ではA1層,A2層,A3層,B層,C1層,C2層,C3層,D層,E層が観察された。A1層は耕作土でピット全体に連続し地表から約20cmの深さが耕作によって攪拌を受けている。また,西側のグリッドW1,深度1.30m付近までから北側法面のグリッドN1・深度1.30mにかけては暗渠排水施工による埋め土が確認され,これもA1層に一括した。北側法面のグリッドN5,6では耕作による撹乱が地表部では確認されず地表の黒色土と下位の腐植層の境界は不明瞭である。
A2層はピット全体に連続する黒色強腐植層である。層厚は20cm程度であるが西に向かってやや層厚を増しており西側法面では最大50cmの層厚となっている。A3層は暗灰色の中〜弱腐植層であるが,分布は断続的で最も厚い部分では30cm程度である。A3層の基底は凹凸が見られ,部分的に礫混じりとなっている。最下部から5100±40yBPの14C年代が得られた。これは平成14年度調査でこのピット近傍で同層準から得られた年代値4660±70yBPの14C年代と調和的である。
B層は淡褐色のローム層で南側法面では礫混じりとなるが,北側法面ではほとんど礫を含まない。層厚はピット内でも大きく変化し,南側法面では10〜20cmであるのに対し,北側法面では50cm前後で連続し,グリッドN2で80cm以上の層厚を示す。ただし,北側法面および南側法面のグリッドS5,6付近のB層は一部が後述するC2層の可能性も考えられる。
C1層は北側法面および西側法面に見られる細礫を主体とする砂礫層であり,西側法面では下位のD層を不規則に側方侵食することが観察された。C1層上面および下面は緩やかに西へ下がるようにも見えるが、特に下面は下位のC3層との境界が必ずしも明瞭ではなく、この層の傾きを認定することは危険である、。南側法面のグリッド4〜5にかけてはC1層が淡褐色のローム層を侵食していることが観察される。この側方侵食を受けるローム層をC2層とした。C3層はC1層の下位をしめる砂礫層である.礫径はC1層に比して有意に大きく,インブリケーションの発達が悪い.また,S−2〜S−3にかけては礫の長軸が急立〜直立している.C3層中のわずかな腐植片から2150±40yBPの14C年代が得られた。ただしこの年代はA3層下部の年代5100±40yBPと矛盾する。微細な腐植片であることから、掘削時に壁面に付着したより表層の物質である可能性も否定できない。
D層は北側法面に連続よく見られるローム質で淘汰のよいの細粒砂層である。この砂層は層厚が20〜30cmでピット内では大きな層厚変化はないが,北側法面のグリッドN2付近で分布高度が低下する。南側法面でもD層は観察されるが一部はC1層によって削り込まれる。南側法面のD層はグリッドS3付近で下方に向かって屈曲し,この部分に数cmのずれを持つ直線的な構造が見られた。この構造は下位の砂礫層(E層)にも礫の直線的配列として認識することができる。
E層は比較的礫径の大きな砂礫層であり,円〜亜角礫で構成され礫種も花崗岩類・泥岩・砂岩など多種にわたあることから本流の堆積物であると考えられる。この砂礫層中にも変形を受けた可能性が考えられるシルト・細粒砂層が見られ礫の配列による直線的な構造が観察されるが,それぞれ地層のずれを確定できないことから断層面としても表記は行っていない。
Tp5−2
Tp5−2ではA1層,C1層,E層が観察された。A1層は耕作土でピット全体に連続し地表から約30cmの深さが耕作によって攪拌を受けている。この直下には淡褐色のローム層がみられる。このローム層には部分的に礫混じりとなる。Tp5−1に見られるC1層との直接的な関係はあきらかではないが,下位の砂礫層との関係および層相からC2層とした。
C2層の下位には確認される層厚2mの砂礫層が見られる。この砂礫層は巨礫を含む円〜亜角礫で構成され,礫種は花崗岩類,砂岩,泥岩を主体とする。基質は全体に砂優勢で部分的に粗粒砂や細礫によるラミナが観察される。これらのラミナはほぼ水平,もしくは僅かに西に向かって傾斜を示す部分もある。これらの砂礫層をE層とした。