紋別地区では,踏査の結果,撓曲崖の下盤側に2750年前以降の腐植土が130cm厚で発達することが確認された.この厚さは,上盤側の腐植層の厚さおよび堆積年代からみて異常であり,断層変位によるプリズム層に相当する可能性がある.牧草地であり人工改変の影響も小さいことが予想されること,リニアメント横断方向に十分な調査長を確保できることからも,トレンチ調査に最適であると判断される.その一方,リニアメントを成す撓曲崖は,広尾町道21線の北方では急速のその比高を失い,国道付近ではほぼ平坦となる.これは,1)変位地形が新期堆積物で埋積された,2)断層変位そのものが小さくなった(断層の北端)といった可能性を示し,断層の分布・活動長に関して検討するためにはこの比高変化の原因も明らかにする必要がある.よって,まず撓曲崖がはっきりしている箇所でトレンチ調査を実施し崖の構造を明らかにする一方,ピット調査によりリニアメント上盤側,下盤側の表層構造について情報を得ること,ボーリング調査により段丘礫層以下の構造に関する情報を得ることを意図した.また,撓曲崖がその比高を失う町道21線以北にてピット調査・ボーリング調査を実施し,断層の水平方向の活動度について検討することとした.楽古地区では,石坂面以降に断層が活動した可能性を示す地形地質的根拠は見いだされなかったため,これ以降の調査対象からは外すこととした.