測定は荒川−パウシベツ川間断層,開陽断層および古多糠断層を横切る3測線(養老牛測線・開陽測線・西北標津測線)でのプロファイル測定を中心に行った.いずれも当該断層に対して行われた反射法地震探査測線に沿ったものである.また,開陽断層については地震探査にあわせた測線の他にリニアメントの背後を通る測線と測線東方でリニアメントを横切る測線において調査を行い(開陽測線Ex1,Ex2),より詳細なデータの収集および解析を試みた.
観測点は基本的に約50m間隔で配置したが,橋,暗渠などの道路事情によって若干ずらした点もあった.観測点数は3測線合わせて298点であり,全ての点に対してブーゲー異常値の算出を行った(資料V.2−1).調査には閉塞方式を採用し,中標津町内2等水準点“1050号”を現地基準点とし,北海道大学内一等重力点(980,477.57 mGal)および札幌管区気象台帯広測候所内一等重力点(980,477.57 mGal)と結合して基準となる重力値を決定した.探査位置図を図3−2−1・図3−2−3・図3−2−7に示す.
各観測点の緯度・経度・標高データは水準測量(トランシット測量)より算出した.精度は水平方向で±1m程度,標高については±10cm未満であるため,0.1mGalオーダーでの議論を行うのに十分な精度である.各々の調査の詳細については表3−2−1に記載している.
各測点に対するブーゲー異常値算出については,
BA=g−γ+βh−BC(ρ)+TC(ρ)+AC
の式から決定している.なお,ここで
g:絶対重力値(観測値に潮汐、ドリフト、器高補正を施したもの)
γ:正規重力値
β:フリーエア勾配
h:標高
BC:ブーゲ補正値
TC:地形補正値
AC:大気補正値
ρ:補正密度
である.ブーゲー補正および地形補正に必要な補正密度値を求めるためにg−h関係を求めたところ,大きく分散してしまい近似直線を引くことが出来なかった.このため,一般的な地殻の平均密度である2.67g/cm3を採用した.各補正方法の詳細については表3−2−2に記載してある。
以下,それぞれの観測に対して解析した結果について解説する.
表3−2−1 標津断層帯における重力探査の探査仕様
表3−2−2 ブーゲー異常値算出に用いた補正