4−8 まとめと今後の課題

今回の調査によって,富良野断層帯の西縁の断層群のうち,御料断層は,およそ6000年から8000年の間隔で活動している.これは,起震断層とは考えられない.起震断層とは考えられる中富良野−ナマコ山断層が,同様の範囲で活動したとすると,マグニチュード6.3−7の地震を起した可能性がある. 

御料断層の検討から,最も新しい活動は約1800年前以降,1600年以前に起こったと推定され,平均変位速度を勘案すると近い将来に同程度の規模の地震が発生する可能性は低い.時間予測モデルに従うならば,次の活動は5000年後となろう.

ただし,ここでいう活動間隔などの時間的な予測精度にはかなりの幅がある.したがって,いたずらに不安になる必要はないが,無用に安心するのも問題である.これは,ある調査の予測を示したものであって,活断層を伴わない地震活動は富良野市周辺で,現在も進行しているのである.

近年,富良野断層帯付近では,地下浅部で地震活動が観測されるようになってきていることからも,地震に対するいざという場合の備えを忘れてはならない.そのためには,住民のひとりひとり,地域,自治体,国そして防災関係機関が一体となって,それぞれの段階での地震対策を進めてゆき,地域の全体的な防災力を高めて,被害を最小限にする努力が必要である.

まず,自分たちの住む地域の活断層の位置や,自分の住む場所の地盤条件について,よく確認し,建物や室内の安全性等について十分な配慮をしてゆきたい.近い将来活動する場合ではないという結論とはいえ,活断層の上に重要な構造物をつくることは避けたい.また,年代の幅を考えるならば,このことを次の世代へ伝えてゆくことも重要である.活断層の周辺はもとより南富良野町,富良野市,中富良野町,上富良野町に住む人々は,地震との共生という観点に立ち,日頃から特に地震防災に心がけてゆく必要がある.

なお,これらのデータの多くは,御料断層の性質から,中富良野ナマコ山断層を推定しているのであって,活動時期については不明というのが現状である.今後は,同断層のような傾動する上盤変形から,活動時期を解明する手法を開発する必要がある.