4−5 発生した地震の規模

活断層の長さ(L),および単位変位量(D)と発生する地震の規模(マグニチュ−ドM)には次のような関係があることが知られている(松田,1975).

LogL=0.6M−2.9……(1)

LogD=0.6M−4.0……(2)

ここで,起震断層として想定されるのは,中富良野−ナマコ山断層である.御料断層は前述したように副次的断層の可能性が高く,上記式を使用して起震断層としての評価をおこなうのは問題がある.

しかし,御料断層の活動は,中富良野−ナマコ山断層の活動と密接な関係にあると考えられる.今回は,主要起震断層の中富良野―ナマコ山断層の評価として,以下の4つのケースについて検討を行った.

@御料断層の分布範囲のみが活動する場合

御料断層の長さ・変位量をもって計算すると以下のようになる.

(1)式から得られるマグニチュードをMlとすると,御料断層の長さは,7.5kmであるので,Ml=6.3となる.また,(2)式から得られるマグニチュードをMdとし,かつ単位垂直変位量を1−1.5mとすると,Md=6.6〜7となる.なお,断層の傾斜角を60°とした場合の実変位量は1.15〜1.7mとなり,Md=6.7〜7となる.

活断層の長さから推定されるマグニチュードより変位量から推定される変位量が大きい傾向がある.これは,分布長がより長くなる可能性を示唆している.

A清水山断層の範囲まで一連に活動する場合

(1)式から得られるマグニチュードをMlとすると,御料断層から清水山断層の全長は,13.5kmであるので,Ml=6.7となる.

これは,@式で得られたMdから推定される地震の規模とほぼ同じオーダーである.

B清水山断層・御料断層の範囲に加えて勇振川の部分まで一緒に活動した場合

このセグメントを設定する明確な根拠はないが,中富良野−ナマコ山断層の平均変位速度から,八線川地区がB級の活動度を,山部地区がC級の活動度を示すというように,違いをみせている.したがって,断層の走向が[くの字]に屈曲する勇振川付近を境界としたセグメントを設定した.

この場合,セグメントの総延長は,17.5kmとなることから, (1)式から得られるマグニチュードをMlとすると,Ml=6.9となる.

C中富良野−ナマコ山断層全域が活動した場合

断層の活動が,セグメント毎に分割されるのではなく,北側が大きく変位し,南側が少ししか変位しないような配分であった場合,同時に活動するケースを考えておく必要がある.

この場合,セグメントの総延長は,23kmとなることから, (1)式から得られるマグニチュードをMlとすると,Ml=7.1となる.

ところで,活断層の性質には

   R=D/S

     R:活動間隔,D:変位量,S:平均変位速度

これに,経験式(1)式,(2)式を組み合わせると,

   R=79.4×L/S

       R:活動間隔,L:長さ,S:平均変位速度

の関係がしられている.

既知の平均変位速度と長さを代入することにより活動間隔がもとまる.

トレンチ調査では,最新活動期以外は活動時期を特定できていないが,そのデータから範囲を限定することができる(得られた活動間隔が妥当なものか検証可能である).

そこで,S=0.16,L=7.5,13,17.5,23の場合を検討した.

@R(L=7.5)=3700年

AR(L=13)=6400年

BR(L=17.5)=8600年

CR(L=23)=11000年

ここで,@とAの場合は,トレンチデータからみてあり得ないことがわかる.AとBは,許容範囲内に収まっている.

もし,本断層が,松田の経験式にあうならば,長さ13−17.5km程度,活動周期約6400〜8600の再来間隔をもち,マグニチュード6.5−6.9程度の起震能力を持っていると考えられる.