4−2 断層周辺の地下構造

北海道(2003)は,八線測線において両断層を横断する反射法地震探査をおこない,地質構造を明らかにした.中富良野−ナマコ山断層は,少なくとも標高‐500m以浅では,断層による反射面の切断はなく,撓曲構造を示している.撓曲構造を示す反射面の内,良好に連続し,かつ強い反射面がある.この強反射面は,測線上の露頭との対比から,十勝火砕流堆積物の上面に対比される.十勝火砕流堆積物の上面は,盆地内では標高‐300m〜‐400mまで埋没している.このような形態から,中富良野−ナマコ山断層は,地下深部に伏在するブラインドスラストと考えられ,その形態はくさび型スラストと推定される.十勝火砕流堆積物上面の反射面より以浅では,撓曲部から盆地底に向かって,各反射面間の間隔が広くなるgrowth strataがみられる.このことより,この撓曲変形の開始時期は,十勝火砕流堆積物堆積以降,すなわち約1.1−1.2Ma以降と考えられる.

御料断層が示されている位置では,近傍の反射面群が層理面とほぼ平行の東方に傾斜していることから,層面すべりに起因するバックスラスト(Blind thrust related back thrust)と考えられる.御料断層と境界断層との間には,上に凸の反射面の構造がある.この構造の北方の御料地区には,南北〜南東トレンドのバルジがみられる.バルジは,いわゆるクサリ礫層からなることから高位段丘礫層に対比され,周辺の扇状地堆積物より古い.このことから,上に凸の構造は,アクティブな背斜構造の可能性がある.

以上の特徴から,以下の様に,その構造発達史を要約できる.

富良野盆地西縁の断層系は,西側山地の地下深部から西傾斜で延びてきた主スラストが存在し,かつては境界断層が活動していたが,約1.1−1.2Ma以降は現在のナマコ山の東側に分岐した.クサビ型ブラインドスラストの発達は,ランプ背斜の成長による曲げ褶曲を進展させ,東翼に逆向きの層面すべりが生じ,御料断層が作られた.