一方,十勝熔結凝灰岩二次堆積物は,緩い波状の構造を示しながら,大局的には,崖地形と調和的に西傾斜を示していることから,撓曲変形を受けている可能性もある.しかし,トレンチ東端では,十勝熔結凝灰岩二次堆積物の構造が水平であるのに対して,撓曲崖とみた地表面とは斜交することから,断層運動によって撓んだ地形ではなくて,浸食による地形と見るべきである.
以上,本地区においてが,御料断層の存在を明確に支持する構造は確認されなかった.浸食および変形で説明を試みたが,双方それぞれに矛盾する観察結果も得られ,どちらとする判断もつけることができなかった.
本地点の結果を,単純にトレンチの位置選定の失敗と結論づけることは容易である.しかし,御料断層の分布域のほとんどが本地点と類似した地形・地質の条件を持つことに注意してほしい.本地点で失敗したということは,同様の条件の場所(ほとんどであるが)で失敗する可能性が高いということになる.中御料地区での断層構造の検討から推定すると,上御料地区はスラストの前縁にあたるので,断層面は水平に近く,その先端はブラインド化し,地表に露出していない可能性がある.もしそうであれば,本地点は,従来型のトレンチ調査の規模で,断層構造を識別できるか疑問な点があり,調査方法から検討し直す必要がある.