3−3−3 ボーリング調査結果

本地区におけるピットAの調査により,断層の位置や活動性が明らかとなったことから,さらに,断層の傾斜などの形態,累積変位量,変位速度を明らかにする目的で,ピットAを挟んで,6孔の群列ボーリングを実施した(図3−3−1).また,ボーリングコアから試料を採取して,火山灰分析及び14C年代測定を実施した.

各ボーリングの柱状図を図3−3−10図3−3−11図3−3−12図3−3−13図3−3−14図3−3−15に,火山灰分析結果を図3−3−16図3−3−17図3−3−18図3−3−19図3−3−20に示す.

ボーリングコア観察結果,火山灰分析結果等に基づき作成したテフラの対比図を図3−3−21に,また,地質断面図を図3−3−22に示す.

FA−1孔の深度6.26m付近,FA−6孔の深度9.17m付近,FA−5孔の深度23.75m付近及びFA−4孔の深度58.98m付近にいずれも,上盤側の十勝火砕流堆積物と下盤側の礫層とを境する断層が確認された.断層面の傾斜は,FA−6孔−FA−5孔−FA−4孔間では,約60°東傾斜と比較的高角度であるが,FA−6孔の深度10m付近で急激に低角化して,FA−6孔−FA−1孔間では約40°東傾斜,FA−1孔−ピットA間では30°以下の傾斜となり,ピットAで確認された断層に連続する.

断層の下盤側を構成する堆積物は,主に固結した礫層からなり,腐植層,腐植質シルト層,砂層を挟在しており,下位ほど固結度が高い.断層下盤側のFA−1孔,FA−2孔及びFA−3孔において,火山灰分析の結果,標高216m〜218m付近において,礫層中から支笏第1テフラ(Spfa−1:40〜45Ka;新編火山灰アトラス,2003)が検出された.同テフラは,東方へ7°程度の傾斜を示すことが明らかとなった.また,同様に断層下盤側の礫層中に挟在する腐植層・腐植質シルト層の14C年代は約31000y.B.P〜約>49000y.B.Pの値を示すが,年代の逆転もみられる.

断層上盤側では,十勝火砕流堆積物を覆う礫層中には,Spfa−1起源と推定される火山ガラスが微量検出されることから,断層上盤側の礫層の堆積年代は,Spfa−1降下以降と考えられる.したがって,Spfa−1の鉛直変位量は約7m以上となる(図3−3−23).

また,断層上盤側のFA−1孔及びFA−5孔には,ピットAに分布するW層中のシルト質砂層が分布しており,W層上面での鉛直変位量は約2.5mである(図3−3−23).

W層を覆うV層は,断層上盤側のFA−1孔及びFA−5孔,断層下盤側のFA−2孔及びFA−3孔に認められ,その層厚は20cm〜40cm程度と薄く,層厚の変化も少ないが,ピットAにおいては,V層の層厚はTm程度であり,低崖の基部で有意に厚い.このこと及び前述の層相等から,V層は,低崖の基部を埋めて堆積したプリズム堆積物と判断される.

したがって,本地点では,W層堆積後,V層堆積前にも断層活動があった可能性が高く,この活動が最新活動の一回前の活動であり,その時期については,W層の14C年代から約9500年前以降,約2500年前以前となる.

また,上記のW層上面における鉛直変位量(2.5m)は,最新及びその一回前の2回分の累積変位量と判断される.