(1)プロファイル測定

重力探査では推定される断層線付近の重力異常を調べるためにプロファイル測定を行った。プロファイル測定にはシントレックス社製重力計CG−3Mを使用した。測定は、稲穂断層及び士幌川断層と交差する豊田9号沿いの測線(以下、G5 Line)と、音更川−札内川断層及び都市圏活断層図で示された断層と交差する下士幌北5線沿いの測線(以下、G6 Line)で行った。各測線及び断層位置図を図3−2−2−1図に示す。各測点の標高及び位置は、G5 Lineは国土地理院四等三角点(東四線)、帯広土木現業所BM及び3級基準点、G6 Lineは国土地理院四等三角点(北五線)、帯広土木現業所3級基準点を標高基準点として、光波測量器により水平方向±1m程度、標高については±10cm未満の精度で求めた。測定間隔は、河川など地形的な制約を受ける場合を除き、基本的に両測線とも約50mとした。測点数は、G5 Lineで87点、G6 Lineで74点、計161点である。なお、本調査地域の重力基点として、国土地理院一等水準点8165を用い、重力基点の重力値は、帯広測候所内の一等重力点J33(980418.12mGal)との往復測定により980431.584mGalとした。

調査期間中のドリフト値は、21〜22μGal/hourの範囲であった。各測点には、地球潮汐補正(Longman,1959)・機高補正・ドリフト補正を施し、各点の重力値を計算した。また、緯度補正・地形補正(YAMAMOTO,2002)・大気補正・フリーエァー補正及びブーゲー補正を施し、各点のブーゲー異常値を求めた。計算には測地基準系1980の実用式を使用し、ブーゲー補正、地形補正の密度は2.67g/cm3とした。補正後の重力値の一覧を表3−2−2−1表3−2−2−2に示す。

各測線のブーゲー異常と地形(測定標高)断面を図3−2−2−2、図3−2−2−3に示す。G5 Lineではブーゲー異常は測点31付近(西側の稲穂断層付近)で最も低く示し、その東西両端に向かって高くなるV字状の形状を示す。地形的には稲穂断層付近でそれに対応した起伏が見られるが、士幌川断層付近では顕著な変化は見られない。ブーゲー異常では西側の稲穂断層付近において地形変化ほど顕著な変化は見られないが、東側の稲穂断層付近では地形に対応した不連続な変化が見られる。また、不連続な変化としては、測点82付近でもみられるが、この場合、それに対応した地形的な変化は見られない。G6 Lineではブーゲー異常は全体に凹状な形状を示す。特に、連続的な変化を示しているが音更川−札内川断層付近の変化量は、この測線内で最も大きい。ブーゲー異常の不連続は、音更川−札内川断層付近、及び地形的に急激な変化を示す付近、例えば、測点13、25−26、34、37、67付近で見られる。しかし、これらの多くは地形的に盛土、切土されている地点であり、地形補正が充分なされていない可能性もあり、必ずしも地下構造に反映した変化であるとは断定できない。一方、測点67の不連続は、架橋付近の測定であり、地形の影響によるものと判断される。音更川−札内川断層線付近では地形変化やブーゲー異常変化が見られるが、都市圏活断層図で示された断層付近では地形・ブーゲー異常共に顕著な変化は見られない。

両測線のブーゲ異常から判断して、上記不連続点は測定誤差範囲内の凹凸変化であり、それが断層の影響であると特定づけることは難しい。なお、G6 Lineにおける音更川−札内川断層の変化は,十勝平野を成す構造盆地そのもの盆状構造を反映したものである可能性もある。

参考文献

Longman,I.M.(1959):Formulas for Computing the Tidal Accelerations Due to the Moon and the Sun,Jour.Geophysical Res.,64,2351−2355.

YAMAMOTO(2002):