(1) 表層速度分布
図3−2−1−5の表層速度分布図から、本測線の地表付近の速度分布は次のとおりである。
地表下20m以浅では測点No.280〜No.340付近を除いて、速度1,500m/s以下を示している。地形的に盛り上がっている測線東端の地表部には速度1,200m/s以下の低速度帯が分布し、速度1,500m/s以下の範囲も40m〜50mと厚くなっている。
地表下20m以深では速度1,500m/s〜1,900m/sを示す。測点No.30〜80および測点260〜370付近の深部では速度1,800m/s以上のやや高い速度帯が分布し、特に測点320〜370では深度70m付近まで高速度帯が延びている。
(2) 反射イベントの分布状況
図3−2−1−9の時間断面図から本測線の反射パターンは次のとおりである。
浅部から1.5秒付近まで強振幅で連続した明瞭な反射イベントが何枚も認められる。特に500ミリ秒付近のイベントは連続性がよい。これらのイベントは全体的にはわずかに西へ傾斜している傾向が見られる。また、測点300付近から東に向かっては緩やかに盛り上がり、測点No.360付近から測線東端部にかけて急激に隆起している。ただし、この部分は測線の端のため、重合数が少なく、S/N比が良くない。
(3) 反射断面の解釈
マイグレーション後の深度断面(図3−2−1−11;図3−2−1−15)から本測線の反射構造は次のように考えられる。反射面の分布は測点350付近を境に西側の成層構造を有する反射パターン区間と東側の不明瞭ながらも東上がりの反射パターン区間に大きく2分できる。
西側の測点1−350では、標高−1300m付近まで成層構造を有する反射面が分布しており、反射面の分布密度・屈折トモグラフィー解析による速度分布から、深度方向に大きく分けて4つの反射面に区分できる。
西側@ 表層〜標高100m程度の範囲:反射面が認められず、弾性波速度は1600m/sec以下である範囲。この範囲は、探査仕様により分解能が悪い可能性もあるが、弾性波速度が遅いという点で一つの地質を構成している可能性が高い。
西側A 標高100〜50m程度の範囲:反射面の連続性が良く、間隔が比較的短く、長波長の凹凸を繰り返しながらも、ほぼ水平な範囲。ただし、測点(253−)280−323では標高100m付近の反射面が明瞭であり、その下位の反射面は不明瞭となる。また、弾性波速度も速い。弾性波速度の速い範囲は測点220−335程度でありこの区間では地質が異なる可能性がある。
西側B 標高50〜−500m程度の範囲:反射面の間隔が比較的長く、反射面の小規模な屈曲が認められるものの、全体に西に向かって緩やかに傾斜している範囲。
西側C標高−500以深の範囲:全体に反射面は断続的であるが、反射面の間隔が長く、長周期の凹凸を繰り返し、大局的には西に向かってやや傾斜している範囲。
東側については、層区分は難しいが、東上がりの傾向が深度方向に行くにしたがって大きくなる傾向が認められ、これは、地層の傾斜の累積性を示している可能性が高い。また、東側では、標高150m以上で弾性波速度が極めて遅い。
道立地質研究所の調査資料によれば、測線上には東側より、南北方向に伸びる士幌川断層,稲穂断層が位置していおり、それぞれ測点360−390,185−200および100−110に西傾斜の撓曲崖が示されている。 マイグレーション後の深度断面上では、士幌側断層と考えられる地下構造は地層の傾斜の累積性として読みとることが出来るが、稲穂断層については、構造運動の存在を類推させる積極的な証拠は得られなかった。
なお,不自然な反射面としては、測点82付近の地表〜標高−400m付近にまで東傾斜の反射面が認められる。
2 R6測線
(1) 表層速度分布
図3−2−1−6の表層速度分布図から、本測線の地表付近の速度分布は次のとおりである。
地表部では測点No.20〜180にかけて速度1,500m/s以下を示し、その厚さは最も厚い測点No.100付近で約50mである。特に地形的に盛り上がっている測点No.70〜120付近では速度1,200m/s以下の低速度を示す。
上記の部分を除いて地表部から深部まで速度1,500m/s〜1,900m/sを示す。深部ではほぼ全域に速度1,800m/s以上のやや高い速度帯が分布し、その深度は測点No90付近で深く、測線の両端に向かって浅くなる傾向が見られる。
(2) 反射イベントの分布状況
図3−2−1−13の時間断面図から本測線の反射パターンは次のとおりである。
R5測線と同様に浅部から1.2秒付近まで何枚もの連続性の良い明瞭な反射イベントが認められる。特に、300ミリ秒および750ミリ秒付近の2枚のイベントは連続性がよい。これらのイベントは、R5測線と同様に全体的にはわずかに西へ傾斜している傾向が見られる。測点No.300〜No.330付近にかけて急に東へ向かって隆起している。ただし、この急傾斜部では速度が急変しているために反射イベントの連続性は良くない。また、測点No.70〜No.110付近にかけて反射イベントがやや乱れているが、これは表層部の低速度帯の影響と考えられる。
(3) 反射断面の解釈
マイグレーション後の深度断面(図3−2−1−14;図3−2−1−16)から本測線の反射構造は次のように考えられる。一見して、測点300〜330付近にかけて東へ向かって急立していることが伺え、その両側はR5測線よりも西に向かって傾斜する傾向が強いことが伺える。
測点300〜330付近の急立帯の両側の反射パターンは良く類似しており、反射面の分布密度・屈折トモグラフィー解析による速度分布から、深度方向に大きく分けて4つの反射面に区分できる。
@ 表層〜標高20(最大30)m程度の範囲:反射面が認められず、弾性波速度は1600m/sec以下である範囲。この範囲は、探査仕様により分解能が悪い可能性もあるが、弾性波速度が遅いという点で一つの地質を構成している可能性が高い。
A 標高20(最大30)〜西側−120m,東側−80m程度の範囲:非常に連続性の良い2枚の反射面の上部にあたる範囲である。反射面は不明瞭ながらも連続性が良く、間隔が比較的短く、長波長の凹凸を繰り返しながら緩く西へ傾斜している。ただし、測点230−270では上向きの凸形状を示しているように見える。
B 標高西側−120m〜−700m,東側−80m〜−550m程度の範囲:反射面の間隔が比較的長く、反射面の小規模な屈曲が認められるものの、全体に西に向かって緩やかに傾斜している範囲。ただし、測点220−270では上向きの凸形状を示しているように見える。
C 標高西側−700m(,東側−550m以深の範囲):東側については反射面が不明瞭なため、議論が難しい。西側については、全体に反射面は断続的であるが、反射面の間隔が長く、長周期の凹凸を繰り返し、大局的には西に向かってやや傾斜している範囲。ただし、測点200−280では上向きの凸形状を示しているように見える。
急立帯の傾斜の累積性については、R5測線では顕著に認められたが、R6測線ではさほど顕著ではない。
道立地質研究所の調査資料によれば、測線上には東側より、南北方向に伸びる士幌川断層の南方延長部,音更川−札内川断層が位置していおり、それぞれ測点290付近,80付近に示されている。 マイグレーション後の深度断面上では、測点300〜330付近にかけての急立帯として士幌側断層を捉えることができる。傾斜の累積性としてR5ほど顕著でない。またデータも悪い。音更川−札内川断層については、構造運動の存在を類推させる積極的な証拠は得られなかった。
不自然な反射面としては、測点220−270付近の標高20m〜標高−700m付近まで認められる凸型の反射面が認められる。
道東自動車道建設関連資料によるボーリング調査では芽登凝灰岩の基底標高が40mとされており、これは測点310付近にあたるが、これに対比できる反射面は認められない。