(4)ピット・ボーリング・トレンチ調査地の選定
旭断層では,以下のように考察し,ピット・ボーリング・トレンチの調査地を決定した.旭断層では,平成13年度調査により,トレンチ調査の可能性がある地点が2地点見いだされていた.一地点目は音更町東旭においてMa−t11面上に見いだされていた東上がりのバルジ状地形である.この地点では,ボーリング調査により池田層上面および段丘礫層上面に比高1m程度の凹凸が推定され,それより上位に発達するシルト層・泥炭層・砂層においては撓曲状地形付近でTa−dテフラ付近より上位の泥炭の層厚が厚くなることが推定されていた.この構造は,1)この地点の地下に伏在断層が存在し,構造的に泥炭層の層準が繰り返している,2)撓曲状地形付近を境に地形面が異なる,3)礫層より上位の堆積物の層厚変化は堆積時の堆積環境の違いを反映しており,断層による変位とは関係ない,といった3つの可能性が考えられた.そのため,平成13年度に行ったボーリング調査に加え,地形変換点付近でボーリング調査(各8m×3孔,計24m)を追加し地下浅部における堆積物構造の変換点を絞り込んだ上で,ピット調査により浅部〜中部の堆積物の断面を確認,そしてそれらを総合的に判断してトレンチを掘削することとした.二地点目は,音更町栄において, Ma−t11面上に見いだされていた東上がりのゆるやかな撓曲状斜面である.この斜面は,旭断層のリニアメント上に位置し,落ちのセンス(方向,大きさ)がよく似ること,同断層のリニアメントの北方延長ですぐ北の長流枝内川に露出する池田層に西落ち急傾帯が認められたことから,旭断層の活動により形成された地形である可能性が出てきた.しかし,この地形的高まりは,連続性に乏しく,走向の”ふれ”が大きいこと,人工地形の可能性が残されること,地下浅部についての情報が乏しく,トレンチ調査を行うにはまだリスクが高いことから,ボーリング調査を配置,地下浅部〜中部の地質状況を確認した上で,再度検討することとした.途別川断層では,途別川と札内川に夾まれた,北北東−南南西に延びる台地状の高まり(Ma−t8面)において,その東端に沿って同じ走向で南南西に延びる小丘が認められた.しかしこれらは連続性に乏しく,その表層には”古砂丘”を構成したと考えられるSpfa 1テフラの二次堆積物が厚く発達すること,その西方の平坦地に比べて水はけが良く,地下浅部〜中部の地質構成物が異なる可能性があることから,トレンチ調査のリスクは高い.このため,まずボーリング調査によって地下浅部〜中部の地質状況を確認し,ピット(2ヶ所)により地質構成物をより詳細に把握したうえで,再度検討することとした.
光地園断層については,候補地として上野塚地区の平成13年度ボーリング調査地点,ボーリング地点北の丘陵地,同地点南方の町道付近の撓曲崖状地形,広尾町紋別地区の東あがり逆向き低崖が上げられる.紋別地区は崖の総延長が数百m以下と短く礫層より上位の堆積物に乏しく断層変位があったにしてもその認定が困難であること,ボーリング地点北の丘陵地は地形が古く堆積物が失われている可能性があること,南側の町道付近は直近で排水工事が行われ浅部地質が乱されていること・埋設管が存在することやリニアメントが防風林と重複しであり掘削困難であることから,ボーリング地点を対象とすることとする.