リニアメント周辺には,Na−t3,t5,t6面が位置する.Na−t3面では礫層直上に白色粘土,ローム層(テフラを欠くが,Spfa 1に似るガラスがまれに見られる)が累重する.Na−t5面については,礫層上に再堆積ロームが見いだされる程度である.Na−t6面でも良好な露頭は見いだされなかった.ただし,畦を切るために耕耘された耕作土を観察する限りでは,礫層上位に直接クロボク土・森林土が載り,ローム層は存在しないかごくわずかである.
(2)地質と断層露頭
段丘礫層より下位の地質は,渋山層に相当する斜交層理砂層がNa−t3面段丘崖下部で観察される.断層・撓曲・傾動は露頭オーダーでは観察されず,活断層露頭は未発見である.
(3)変位量と平均変位速度
音更町豊田では,二本のリニアメントのうち西側は,Na−t4面とNa−t6面の境界を成している.図3−1−3−14に地形測量断面を示す.段丘崖の比高は西落ち10mだが,面が異なるため変位基準とならず,地形変位量は算定できない.東側のリニアメントはNa−t4面上を通過する川崖の可能性があり,地形測量結果(図3−1−3−14)を見ても,リニアメントを夾んで比高変化は見られない.十勝平野北部〜中部のうち,音更町豊田付近ではNa−t4面の平均傾斜は南下がり,測量ラインは東西方向であり,Na−t4面の等高線と平行に測量が行われている.地形変位が存在するならばライン上でリニアメントを夾んで東上がりの断面が描かれるはずだが,結果として比高差は検出されなかった.東側のリニアメントについては断層変位により形成された可能性は低いと判断し,変位量,平均変位速度の算出は行わない.