十勝平野においては,地質構造の解析から,更新世に入ってからも構造運動が継続している可能性(図3−1−1−1)が指摘されていた(岡,1982;松井・松澤,1985;岡,1999;2000;2001).また,重力探査の結果も,十勝平野において平野東縁に基盤岩の隆起帯が存在すること,盆地中央部が大きく沈降し,なんらかの構造運動が存在することが示唆される(図3−1−1−2).岡(2000)によれば,帯広〜幕別にかけて,前期〜中期更新世の火砕流堆積物などの地層群の深度が,幕別台地などで大きく上昇していることがすでに示されている.一方,地形学的見地からは,平川・小野(1974)により,すでに後期更新世の段丘高度の解析に基づいて活構造の存在が指摘され.活断層研究会(1980;1991)により十勝平野全域についての活断層の分布,東郷(1982)により光地園断層の存在の可能性が指摘された.その後,東郷・小野(1994),東郷(2000)により活断層分布の見直しが,越後ほか(2001)により旭断層の地形変位量の検討が,越後(1999)により地形面対比に基づく平均変位量の概要が示された.また,越後ほか(2002)による浅層反射法地震探査で,途別川断層が当初想定されていたよりもさらに南方へ延びていることも示された.
断層帯北部に関しては,東郷(2000)により稲穂断層が,国土地理院(2002)により士幌川断層の南方延長部にリニアメントの存在が指摘される一方,音更川−札内川断層は活断層として見なされなくなった.押帯断層,東居辺断層についてはその分布の再検討が成されている.
しかし,これらの検討では,断層周辺の詳細な地形地質調査が行われていないこと,ごく一部の例を除き,段丘の年代にはほとんど根拠がないことのため,断層群の活動度のパラメータを十分に押さえられているわけではなかった.