標津断層帯は北から丸山西方断層,古多糠断層,開陽断層および荒川−パウシュベツ川間断層より構成するとされるが,これらのうち,丸山西方断層および古多糠断層は右雁行状の隆起・沈降帯(堆積盆)である摩周−知床隆起帯と知床南東沖堆積盆の境界部に形成されたもので,火山弧である千島弧内帯内に形成されている.一方,開陽断層と荒川−パウシュベツ川間断層は千島弧外帯に属する外帯内帯境界堆積盆列の一つである根釧堆積盆と同内帯の火山隆起帯との境界に形成されたものである.その意味ではこれらの断層帯を一つで扱かうのが適当かどうかという問題もある.図3−13の調査地域付近の重力図で明らかなように,開陽断層付近では平野(根釧原野)に突出するように高重力域があり,それを切るように開陽断層が存在していることになる.この部分を横断して基礎物理探査「根釧」(測線X−B)が実施されており,その探査結果(地震探査断面)を詳細に吟味して高重力の実態を解明することも今後の課題である.なお,平野側へのこのような重力的高まりの突出はNW−SE方向でその他にも存在しており,摩周−知床隆起帯を横断するような構造変換線と標津断層の関係も今後検討する必要がある.