3−2−3 断層帯周囲の地形面の区分と変位

調査地域内では上位より,高位面,中位面,低位面,最低位面および沖積面の5つの地形面が認められる.

[高位面(T1)]

高位面は中標津町開陽台を占める地形面である.武佐岳火山噴出物の一次的堆積の占める面であるとされており(松井ほか,1967),確かに開陽台展望台に上る道路沿いには安山岩質火山角礫岩相の露出が確認できる.一方,山岸(1989)は開陽台展望台の断面露頭で厚さ8mあまりの上位より安山岩角礫層(厚さ4.5m),円礫層(0.8m)および平行葉理砂層(3m)のほぼ水平の重なりが観察されている.これは,面を占める堆積物が一次的堆積ではない可能性も秘めており,本面の扇状地性の是非の検討が今後必要である.

[中位面(T2)]

中位面は報告地域内では山地を除いた範囲では大半を占める地形面である.根釧原野内でも最も広く分布する地形面であり,その広がりと構成堆積物から基本的最終間氷期の海進期に形成された面をベースとして屈斜路火砕流堆積物の流入堆積,その後の削剥・堆積(山地寄りでは扇状地の形成)で形成された面であると考えられる.従来の5万分の1地質図幅などでは厚く地表部をおおう摩周火山系の火山灰・ロームにより構成堆積物の把握が断片的であり,取り扱いが混乱している.山地寄りでは扇状地性であり,根室海峡沿いでは海成段丘的となる.山地際の忠類川中流では河床からの比高は40mあまりであるが,河口域では30m内外である.

[低位面(T3)]

低位面は調査地域北部の忠類川および薫別川沿いなどで中位面を切る河岸段丘として分布する.現河床からの比高は5〜10mである.

[最低位面(T4)]

諸河川沿いに河岸段丘として細切れに分布し,現河床からの比高は数m前後である.

[沖積面(A)]

本面は現河川氾濫原面を含めたものであるが,諸河川沿いに狭長に分布し,全体として樹枝状の分布形態を取っている.