3−1−4 北海道東部の地震活動

北海道の地震タイプとしてはプレート境界型地震,海洋プレート内(プレート破断型),内陸直下型地震,火山性地震および群発地震があるとされているが(島村・森谷,1994;岡,1997;1999),北海道東部ではそれらいずれのタイプも存在している.

[プレート境界型地震および海洋プレート内地震]

プレート境界型地震としては,最近50年間では,1952年十勝沖地震(M8.2,図3−4宇津の図のB領域),1958年エトロフ島沖地震(M8.1,E領域で震源の深さ80q),1963年エトロフ島沖地震(M8.1,F領域),1969年北海道東方沖地震(M7.8,D領域),1968年十勝沖地震(M7.9,A領域),1973年根室半島沖地震(M7.4,C領域)が発生している.領域毎には50〜80年の短周期で大〜巨大地震が発生し,津波をともなうことが多く,長い海岸線を有する北海道東部で最も問題となる地震である.近年では数100年に1回程度の割合で隣接する複数の領域が同時に破壊する巨大地震・津波の発生も危惧されている.

海洋プレート内地震としては1993年釧路沖地震(M7.8,震源の深さ107q)および1994年北海道東方沖地震(M8.1,30km)がある.この型の地震は沈み込む海洋(太平洋)プレートが破断するために発生するものであるが,発生域・時期を予測することは現状では困難であるが,プレート境界型と同様に津波の発生をともなうことから同様に問題となるる.これら両タイプは根室支庁に近い所で発生すると地震動が最大6程度に達し,低地での液状化や傾斜地での地すべり・崩壊など土砂災害が問題となる.

[内陸直下型地震・火山性地震・群発地震]

 内陸直下型地震のうち,プレート境界型地震に続するものは千島海溝から遠ざかるにつれて境界面は深くなり,それとともに震源も深くなり地震の規模の割には地表付近での震度はあまり大きくならず,津波の発生もない.そのため,問題は比較的少ない.しかし,活断層・火山構造など地殻浅部の地質構造に関連する地震は震源が浅いため,地震規模が比較的小さくても問題となる.北海道東部では特に阿寒−屈斜路−知床の火山性隆起帯とその周辺でこのタイプの内陸直下型地震が発生している.これらの地震は往々にして火山性地震や群発地震の性格も有しているのが,北海道東部の特徴である.記録のある1900年初頭以降の有意な地震は以下のとおりである(島村・森谷,1994;札幌管区気象台,1985).

@1907年12月23日根室北部の地震(震央N43°48′・E145°,M6.8):深度6別海.

A1926年11月7日根室支庁中部の地震(震源N43°37′・E145°11′標津川河口付近,M5.6):震度3別海・落石・浜中.

B1938年5月29日屈斜路湖の地震(震源N43°33′・E144°27′極浅,M6.1):震度5計根別・音別・鶴居・霧多布,震源付近集落家屋半分倒壊,地震断層出現?,地震直後に発光現象.

C1959年1月31日弟子屈の地震(震源N43°16′・E144°35′,M6.3):震度5阿寒湖畔・上オソツベツで震源付近建物全半壊多数,本震の9日前頃から地震頻発22日にM5.6の前震,本震の約2時間後にM6.1の地震.

D1963年1月28日養老牛(中標津町)の地震(震源N43°35′・E145°,M5.3):震度5養老牛,4計根別・中標津.建物壁ひび割れなど発生.

E1964年1月8日から3月初の羅臼群発地震:最も大きな地震は1月20日2時過ぎに発生しM4.6(震源N44°3′・E145°13′)で震度4が羅臼,地鳴りをともなう.

F1965年8月31日弟子屈の地震(震源N43°29′・E144°26′極浅,M5.1):震度5弟子屈町札友内,4弟子屈・上オソツベツ,住宅・煙突・サイロなどに被害.

H1967年4月23日屈斜路湖の地震(震源N43°29′・E144°16′,M6.5):震度5弟子屈町コタン・和琴,4網走・釧路・北見など,住宅損壊と国道・鉄道の被害多数.

これらのうち,活断層の活動を指摘できるものはB・Hの屈斜路湖の地震である.しかし,屈斜路カルデラの構造にも関係すると思われるこの断層の活動性については解明は進んでいない.標津断層帯の活動を直接に裏付けるものはこれらの中にはないが,@・A・Dについては震源の詳細は明らかではないが,標津断層帯付近で発生しており,注目できる.なお,雌阿寒岳の火山性地震などを含めて,阿寒−屈斜路−知床火山隆起帯とその周辺の内陸直下型地震活動は太平洋側の大〜巨大地震(プレート境界型・海洋プレート内地震)との連動の活動も指摘されいる.