3−1−3 標津断層帯とその周囲の地形地質概要(付図1)

標津断層帯とその周囲,すなわち今回の調査範囲(図2−2付図1)は北東−南西方向に30q弱・幅5〜12qの面積916kuの広がりがあり,今まで述べてきたことから明らかなように,地質構造的には摩周−知床隆起帯と根釧堆積盆および知床南東沖堆積盆の境界部を形造っている.なお,付図1では地形面区分を主目的として作成しており,地質的表現は今回は行っていないが,断層帯を横断する調査ルートについては,地質分布と地層の走向・傾斜などを表示した.

A.地形概要

地形的には,北西側の摩周−知床隆起帯に含まれる部分が山地を成し,その北部は海別岳火山(山頂高度1,419m)の東側山麓,中部は斜里岳南東部に源流を有する忠類川の中流域および武佐岳(1,006m)など開析の進んだ火山山地群,南部が標津岳(1,061m)・サマッケヌプリ(1,063m)・俣落岳(1,004m)の同様な火山群の南東山麓にあたる.南東側の根釧堆積盆および知床南東沖堆積盆に含まれる部分は台地性平野(洪積平野)を形成しており,地形面としては上位より高位面,中位面,低位面,最低位面(T4)および沖積面(A)より構成されている.水系は調査地域北部では陸志別川・植別川・元崎無異川・薫別川・古多糠川など知床半島脊梁に水源を有する長さ10q以下の短い河川より構成される.同中部には長さ20qの忠類川が流れ,同南部は長さ25qに達する標津川とその支流の諸河川(武佐川・俣落川・荒川・ケネカ川など)の流域である.

B.地質概要

地質的には,山地では主に新第三紀後期中新世の忠類層が南北の軸方向の褶曲構造(30°前後の地層傾斜)を形成して分布し,山地東〜南東縁の断層帯付近に後期中新世の越川層および鮮新世前半の幾品層が急立帯(一般に45°前後以上の東〜北東傾斜)をなして分布する.さらに,これらの地層群と顕著な斜交不整合関係を成して,第四紀前期更新世の武佐岳・西竹山・シタバヌプリ山などの火山岩類(溶岩・火山角礫岩)が開析火山山地を成して重なる.平野では中位・低位・最低位面の堆積物(段丘堆積物群)および沖積層(現河川氾濫原堆積物)に広くおおわれており,忠類川以北の諸河川に沿っては一般的に河崖において段丘堆積物下に鮮新世の幾品層・陸志別層が10°前後以下の緩傾斜層理をなして露出する.段丘堆積物群には屈斜路火砕流堆積物,摩周カルデラ・カムイヌプリ関連の降下火砕物,ロームおよび腐植質層(埋没したものを含む)がともなわれているが,より古期の地形面(段丘)ほどこれらが多く累積しているというテフロクロノロジーの原則が成り立つ.

C.既存の地質・物理探査資料

調査範囲内には5万分の1地質図幅の他に既存の地質資料(ボーリング・露頭調査)および物理探査資料が多数存在しており,収集したものについて付図1に位置などを表示した.具体的な活用は次年度の地形地質調査の概査の中で行うので本報告では大多数は地点表示に留める.収集資料は以下のものである.

@地盤ボーリング資料(ボーリング深度数m〜50m前後)

根室支庁農業振興部耕地課平成13年度根室支庁管内ボーリング資料(約70点,付図1中には青色▲印で地点表示).町関連などのボーリング資料は今後収集予定.

A水井戸ボーリング資料(ボーリング深度50〜200m前後)

北海道水理地質図第11号「根室」に掲載のボーリング資料(地質柱状図・電気検層記録を有するもの16点,付図1中では赤●印で地点表示).

B温泉開発・地熱探査ボーリング資料(ボーリング深度500〜1,500m前後)

調査範囲内のボーリングによる泉源は20箇所であり,付図1中には赤○印で表示したが,そのうちボーリングの地質記録および検層(電気・温度)記録が現在までに入手できているものは標津町金山泉源1号(800m)・2号(1,401.5m)および標津健福温泉(1,201m)である.これらのうち,標津金山泉源1号および標津健福温泉の地質柱状図・検層記録を図3−14に示す.

C物理探査資料

石油公団の昭和59年基礎物理探査「根釧」のX−A−1・2・3,X−BおよびX−C測線資料(概要を北海道鉱業振興委員会編,1990で確認したのみで,元報告書は次年度入手し検討を行う.測線は付図1中では青太線で表示.)

北海道開発局熱エネルギー総合利用調査「根釧地域」関連重力探査B−B′断面資料(北海道立地下資源調査所実施,付図1中では測線を灰色太波線で表示)

地質調査所2000年発行重力図14「根室地域」(調査地域とその周辺について図3−13に示す)

D露頭地質資料

5万分の1地質図幅では具体的な露頭の地質データ(露頭スケッチ・柱状図)はほとんど示されていないが,北海道開発局の国営土地改良事業計画地区「中標津中部地区」表層地質調査報告書には約60箇所の露頭柱状図が示されており,それらの箇所を×印に○で囲んだ番号で示した.これらの具体的な活用は次年度の地形地質調査(概査)の中で行う