3−4−3 富良野市中御料のボーリング調査結果

中御料においては,[新編]「日本の活断層」(1991)等に示されている中御料断層について,その存否の確実性,断層の位置,活動性などを明らかにすることを目的にボーリング調査を実施した(図4−1).

当初の段階では,扇状地面上に撓み状の地形が認められるA−A’断面線沿いに,深度10m程度ボーリングが4孔が計画され(図2−2),そのうち,撓み状の地形の基部でNG−1孔(掘削深度10m)及び同地形の肩部でNG−3孔(掘削深度20m)の2孔のボーリングを掘削した.これらのボーリング位置を図4−11に,柱状図を図4−12及び図4−13に,コア写真及び観察カードを巻末資料に示す.

これらNG−1孔及びNG−3孔の調査結果によると,両孔共に地表面下1m〜2m程度までローム質な赤褐色風化帯が認められ,その下位には固結度の高い礫層が分布する.両孔に分布する礫層は,いずれも挟み層に乏しく(図4−14),本地点では中御料断層の存否などを明確にすることは困難と考えられる.

このため,調査地点を南側に移して,B−B’断面線沿いでボーリング調査を実施した(図4−11).本地点では,上記のA−A’断面線とは異なり,扇状地面は平坦で,撓み状の地形は認められず,文献に示されている中御料断層の隆起側でNG−5孔(掘削深度45m)及び低下側でNG−6孔(掘削深度65m)の2孔のボーリングを掘削した.これらのボーリング位置を図4−11に,柱状図を図4−15及び図4−16に,コア写真及び観察カードを巻末資料に示す.

NG−5孔及びNG−6孔のいずれにおいても,上記のNG−1孔及びNG−3孔で認められた固結度の高い礫層と同じ礫層が分布し,NG−6孔には特に細粒堆積物の挟み層が多く認められるが,挟み層に特徴が乏しく,NG−5孔とNG−6孔との対比は困難である(図4−17).また,NG−5孔においては,この礫層の基底が深度43.09mに確認され,その下位には火砕流堆積物が分布していることが明らかとなった.深度43.09m以深に分布する火砕流堆積物は,火山灰分析結果により,十勝火砕流堆積物(約1.4Ma)に同定された(図4−18).

上記のように,文献に示されている中御料断層を挟んだA−A’断面及びB−B’断面のいずれにおいても,その両側で固結度が高くかなり古いと推定される同じ礫層が分布し,「中御料断層」の両側で層位的な不連続が認められないこと,また,扇状地面上に撓み状の地形が認められる地点は局所的であり,平坦で変位地形が認められない部分も多いことから,「中御料断層」が示されている位置に,かなり古いと推定される扇状地礫層に変位を与えるような断層は存在しない可能性が高いと判断される.

なお,上記のように,本地点の4孔で認められた礫層については,固結度が高いことから,かなり古い時代の堆積物と考えられ,NG−1孔の礫層を覆うローム質土壌の連続試料(深度0.0m〜2.0m)による火山灰分析結果によると,その中部付近の深度1.2mから上位に,支笏第1テフラ(Spfa−1;約4万年前)起源の火山ガラス・鉱物が検出され,1.2m以深では同テフラ起源のガラス・鉱物は検出されない(図4−19).しかし,道立地質研究所がNG−6孔の深度約6.3m付近の試料で実施した14C年代測定結果によると,24300±230y.B.P.の値が得られている.