4−2−5 以平断層
以平断層では,越後ほか(2001)による反射法地震探査で撓曲構造が捉えられ,池田層堆積以後(前期更新世以降)にも撓曲が継続していたことは明らかである.しかし,変位地形はMa−t1,2面という,少なくとも十万年以前に形成された古い地形面に存在し,しかも台地頂部に位置する.地形面の開析は著しく,段丘堆積物は礫層直上〜クロボク直下までの大部分が,ソリフラクション等で失われている.断層露頭も確認されて居らず,このため,最近数万年間における活動期・活動間隔を知ることは困難である.リニアメント南方延長の牧場川・サラベツ川流域の更新世後期〜完新世段丘群には,累積変位を示す変位地形が存在しないが,以平断層の地形変位量が以平第一付近で最も大きく,そこから南では次第に変位量が低下し,帯広市栄ではほとんど認め得られなくなることは,撓曲が牧場川・サラベツ川流域に達していない可能性を示唆する.すなわち,牧場川・サラベツ川流域で地形変位が存在しないことは,必ずしも以平断層が最近数万年間活動していないことを示さない.現時点では,以平断層の最近数万年間の活動度を評価することは困難であろう.