茂発谷断層では少なくともMa−t1面に東上がり20〜30mの地形変位が形成されている.Ma−t1面を340kaと仮定すれば,平均変位速度は0.06m / ka(C級中位)となるが,この値は過小見積もりである可能性が残る.茂発谷断層の主要なリニアメント上には,最近数万年間に形成された地形面(Ma−t7面以新)は認められないため,この断層の最近数万年間の活動度を直接評価することは困難である.
新和断層はMa−t2面,Ma−t3面に東上がり撓曲変位を与えている.Ma−t2面を300ka,Ma−t3面を290 kaと仮定すれば平均変位速度は0.02 m / ka〜0.07m / kaとなり,C級下位〜中位に相当する.新和断層の主要なリニアメント上にも,最近数万年間に形成された地形面(Ma−t7面以新)は認められないため,この断層の最近数万年間の活動度を直接評価することは困難である.
途別川断層はMa−t8面,Ma−t3面とMa−t4面の境に東上がり変位を形成し,Ma−t3面を傾動させている可能性がある.Ma−t8面を40kaとすれば,平均変位速度は0.06m / kaとなり,C級中位の活動度を示す.
以平断層は少なくともMa−t1面に東上がりの撓曲変位を形成し,Ma−t1面の年代を340 kaと仮定すれば,平均変位速度は0.09 m / ka(C級上位)となる.以平断層の主要なリニアメント上にも,最近数万年間に形成された地形面(Ma−t7面以新)は認められないため,この断層の最近数万年間の活動度を直接評価することは困難である.
上更別断層は,Ma−t2面に東上がり10m程度の撓曲を与えている可能性がある.Ma−t2面を約300kaと仮定すると,平均変位速度は0.03m / ka(C級下位)となる.しかし,実際の平均変位速度はさらに小さくなる可能性があるだけでなく,そもそも存在しない可能性も残る.また,上更別断層のリニアメントに接するMa−t9面には,傾動や撓曲は認められず,活断層であったとしても最近数万年間に活動した可能性は低いと考えられる.
弘和断層は,Ma−t1面に30m程度の東上がり変位,Ma−t2面に約10mの東上がり変位を与えている.Ma−t2面の年代を300kaとして仮定された平均変位速度は0.03m / kaでC級下位程度の活動度を示す.
朝日断層は,Ma−t5面に東上がり6m,Ma−t4面に東上がり10mの変位を与えている.少なくとも更新世中期〜後期には地形面に累積的な変位を与えた活断層であった可能性がある.Ma−t5面を105kaとすれば,平均変位速度は0.06m / kaでC級中位程度の活動度を示す.
更南断層はHi−t2面に東上がり10m前後の地形変位を与えている.Hi−t2面の年代を340kaと仮定すると平均変位速度は0.03m / kaでC級下位程度の活動度を示す.
光地園断層については,少なくとも光地園付近では活断層ではない可能性が地形・地質調査から挙げられる.広尾町開進以南では,地形変位により形成した可能性がある撓曲崖,断層崖的な地形が認められるが,連続性に乏しいこと,広尾断層のリニアメントからややずれた箇所にあらわれること,リニアメントの一般的な走向と斜行する場合があることなど,活断層による地形変位と解釈するには問題が多い.もし仮にこれらの地形変位が光地園断層の活動によるものとして平均変位速度を求めると,Hi−t10面で平均変位速度は0.29m / kaとなる.しかし,現時点では,断層の存否そのものを詳細に検討する必要があると考える.
なお,豊岡東断層,稲士別断層については,活断層により形成された可能性のある地形変位が存在しないこと,地質構造からも鮮新統〜下部更新統に活断層による急傾斜帯などが見つからないことから,活断層ではないと判断される.