「撓曲崖」の比高差は,反射法地震探査を実施した北広島市南の里で大きく,市街および北方では不明瞭となり,江別市トマンベツ付近では地形面の傾動が見られるのみである.
南の里の「撓曲崖」の上盤の地質は音江別川層であり,ステージ7(約20万年前)の間氷期に対比される.また,「撓曲崖」の下盤側は,最終間氷期の地形面に相当し,地形面を北方に追跡するとトマンベツの地形面に対比される.トマンベツでは,地表踏査およびボーリングコアでToyaテフラを腐食層の中から見出していることから,その下位の堆積物はステージ5e(約12.5万年前)に対比されると考えられる.
したがって,地形学的に「撓曲崖」とみられた「斜面」は,段丘崖の縁がその後の傾動運動により斜面化した可能性がでてきた.いずれにしても,変位基準面がことなることから,地形の情報だけから活断層の活動性を知ることはできない.
南の里において,反射法地震探査を実施した結果,反射面の屈曲など断層運動を示唆する構造は全く認められなかった.
したがって,セグメントcに対応する「活断層」は存在しないと判断した.セグメントcみられる構造は地形面の傾動である.