(4)イベント層準

本地区では,断層運動に伴う明瞭な地層の変位は認められない.ただし,以下に述べるような現象が見られる.

○泥炭層中に挟在する砂の薄層による傾動

U層中に挟在する薄層の砂層は,トレンチ内で低地側に向かって傾動しているのが観察される.この砂層は,ボーリングでも追跡され,低地側に傾いているのが確認される.このことから,U層上部の少なくとも砂層堆積後に地殻変動が生じたと考えられる.

○泥炭層の低地側への層厚増加

U層の泥炭層・泥炭質粘土層はその基底付近では層理の傾斜に差があり,アバット不整合の形態をとる.しかし,堆積物の構成に差はないことから堆積環境の変化は考えにくい.ボーリングでU層を追跡すると低地側に向かって層厚が厚くなる傾向がみられる.以上から,U層の基底付近,堆積中に地殻変動が生じたためと推定できる.

○泥炭層の低地側への層厚増加と挟在する粘土層の傾動

W層の泥炭において低地側に向かって層厚が厚くなる.また,挟在する粘土薄層が低地側に傾動している.これは,泥炭層の堆積中に地殻変動が生じたためと推定できる.

○凹状に変形した有機質シルトと前縁に生じた小断層・小規模撓曲

W層とX層との境界付近(X層)において,凹状に変形した有機質シルトが,緩く傾斜した有機質シルトに覆われている関係がみられる.これに対応するスラスト状〜スランプ状の形態で変形している砂泥泥炭薄互層がみられる.この構造は地すべり末端部の変形構造に類似するが,その幅は数mの範囲であり,以上に狭くて小規模である.地すべりとしても滑落崖の高さは数m程度で,かなり低い.このような特徴から,仮に地すべりであっても,降雨などを誘因とするものではなく,地震動を誘因としたものである可能性が高いと考えられる.

以上より,表3−3−3−2に当別断層セグメントdの活動履歴一覧をまとめた.

図3−3−3−9 対比柱状図(吉井の沢北部)(1:40)

図3−3−3−10 堆積年代検討図(吉井の沢北部)(縦1:40横1:400)

図3−3−3−11 地質断面図(吉井の沢北部)(縦1:40横1:400)

図3−3−3−12 地質断面図(吉井の沢北部)(縦1:100横1:200)