当地区は,野幌丘陵西端〜旧豊平川に向かう緩斜面〜沖積低地に位置している.本業務ではこの地形変換点付近(既往試料で撓曲崖との指摘)でテストピット4箇所を実施している.図3−1−2−3−1にテストピット作業と平行して実施した平板測量結果を示す.高さの基準は,大麻東中付近の市道にある江別市基準点(No.1069)の標高を用いた.
ピット掘削位置の選定に先だって,リニアメントと直行する方向で,縦断測量を行っている.その結果,測点20〜100付近にかけて緩やかな凸状の地形を呈すことが測量結果からも明らかになった.この縦断測量結果を基に,面の地質構成およびその構造を明らかにしうる箇所(SP40,55,70,100付近)でテストピットの掘削を行った.
写真3−1−2−3−1 調査地区全景(江別市大麻東中西部)
図3−1−2−3−1 調査箇所近傍地形測量結果平面図(大麻東中西部)(1:800)
<テストピット掘削>
テストピットは,既往資料および現地測量から推定されるリニアメントを挟んで実施した.掘削の結果,明瞭な断層による変位あるいは変形を示唆する構造は認められなかった.
○大麻東中西部 P1
測線上のSP40−45付近で掘削した.
出現した土相は,上位から
・表土,腐植土,粘土ブロックを含む砂質シルト(客土)・・・T層
・腐植土・・・U層
・粘土(植物痕あり)・・・V層
であった.
○大麻東中西部 P2
測線上のSP70−75付近で掘削した.
出現した土相は,上位から
・表土,腐植土,砂質シルト(客土)・・・T層
・黒ボク,腐植土・・・U層
・有機質シルトを挟む細粒砂ないしは砂質シルト・・・V層
・泥炭(木片多含)・・・W層
であった.
○大麻東中西部 P3
測線上のSP100−105付近で掘削した.
出現した土相は,上位から
・表土・・・T層
・黒ボク・・・U層
・有機質シルトを挟む細粒砂ないしは砂質シルト・・・V層
・泥炭(未分解,木片含む)・・・W層
であった.
○大麻東中西部 P4
測線上のSP55−60付近で掘削した.
出現した土相は,上位から
・表土,腐植土,粘土ブロックを含む砂質シルト(客土)・・・T層
・黒ボク,腐植土・・・U層
・粘土〜砂質シルト(植物痕あり)・・・V層
であった.
図3−1−2−3−2 テストピットスケッチ図(大麻東中西部 P1)(1:50)
図3−1−2−3−3 テストピットスケッチ図(大麻東中西部 P2)(1:50)
図3−1−2−3−4 テストピットスケッチ図(大麻東中西部 P3)(1:50)
図3−1−2−3−5 テストピットスケッチ図(大麻東中西部 P4)(1:50)
図3−1−2−3−6 テストピット解釈図(大麻東中西部 P1)(1:50)
図3−1−2−3−7 テストピット解釈図(大麻東中西部 P2)(1:50)
図3−1−2−3−8 テストピット解釈図(大麻東中西部 P3)(1:50)
図3−1−2−3−9 テストピット解釈図(大麻東中西部 P4)(1:50)
<試料採取,分析>
テストピットから,各堆積ユニットの堆積時期を効率的に測定あるいは推定し得る位置から年代測定可能な試料を採取した.分析は,β線計数法を基本とした.
表3−1−2−3−1 14C年代測定結果一覧(大麻東中西部ピット)
年代測定の結果,いずれも3090±60〜5210±70yBPと完新世中頃の値を示した.また,より表層に近い試料の年代値(OH100−17,有機質シルト)が,より深い位置から採取した試料の年代値(OH100−19:有機質シルト,OH100−25:泥炭)より古い例が認められた.
<地質断面図>
当地区では,ボーリング,トレンチを実施していないため,テストピットの結果を用いて地質断面図を作成し,図3−1−2−3−10に示した.
T層は,現在の牧草地を形成する耕作土,旧地形の不陸をなくすために搬入された客土からなり,測線中間付近でやや厚い.
U層は,旧地表を構成していた旧表土,腐植土,黒ボクである.測線起点側(山側)で厚い.
V層は,有機質シルトを挟むシルト〜細粒砂である.測線終点側(谷側)に向かってやや厚さを増している.
W層は,泥炭である.谷側のピット2箇所(P2,P3)でV層の下位に伏在することが確認されたが山側に連続するか否かは不明である.本層の上面も,谷側へ傾斜している.
図3−1−2−3−10 地質断面図(大麻東中西部)(縦1:100 横1:200)