1−6 調査結果の概要

第2年次の調査として,地形地質調査(精査),ピット調査・ボーリング調査およびトレンチ調査を実施した.

当別断層は,石狩低地の伏在部も含めると長さ約55kmの断層であり,リニアメントの不連続性から4つのセグメント(a〜d)に区分される(北海道,2000).検討の結果,地表踏査の場所として,当別町青山地区(セグメントa)と江別市大麻―元野幌地区(セグメントd)の2地区でトレンチ調査箇所の選定をおこなうことにした.また,セグメントbはボーリング調査のみをおこなった.

セグメントaの地形面の年代では昨年に比べて大きな進展はなかった.To−t2面の比高差は5−6mと改定された.これにより平均変位速度は修正された(To−T2:0.1−0.15m/1,000年).この数値はTo−t4の0.1−0.12m/1,000年であることから,4万年前以降ほぼ等速で活動が進行していることがわかった.昨年の結果,約1万年前以降に活動した証拠が見つかった.

検討の結果,1万年前前後とそれ以降の時代の地形面とリニアメントの有無を勘案し青山中央神社(To−t4面)と一番川南部(To−T5)面でピット調査をおこなうこととした.測量の結果,To−t4面の比高差は1.2mと0.5mの2つに分離されることがわかった.ピット調査の結果,青山中央神社のTo−T4面では,1万年前の直前,とその後の2回活動していることがわかった.地形面の比高差はこの事実を指示した.トレンチ調査の結果,一つ前のイベントは,12,080yBPから11,740yBPの間にあることが判明した.最新活動期は,この地点では特定できない.To−t5面をピット調査した結果,4,430±70yBPの段丘礫層を確認した.トレンチ調査の結果,礫層に変位は見られなかった.ボーリング調査の結果,断層の位置は,トレンチ地点よりやや上流側であったことが判明した.ボーリングによる解析断面から,段丘礫層を切断・撓曲させていないと判断した.したがって,セグメントaの最新活動時期は,4,430±70yBP以前ということになる.

セグメントbで,重力探査および反射法地震探査で推定された断層付近の測線上でボーリング調査をおこなった.昨年の調査では,約1万年前以降の地層が少なくとも50mの厚さがありシジミを含む貝化石層(約7,800年前)が見られた.今回は,この層を鍵層として群列ボーリング調査により変位の有無を確認したが,有意な変位は認められなかった.したがって,少なくとも8,000年前以降に活動した可能性は低いと考えられる.

セグメントdでは,昨年の結果,反射法地震探査によってGrowthする撓曲構造が見つかった.傾斜した反射面の一部は,同測線のボーリング調査により約4万年前の地層を含むことが明らかとなった.地表踏査の結果,泥炭層上面が傾動運動に参加していることが明らかになった.泥炭層の基底は5340±70y.B.P(北海道,2000)であることから,活動時期はこの年代以降と考えられる.

斜面上にピット調査を配置し,検討した結果,吉井の沢北でトレンチ調査をおこなうことにした.そこで,同地点において,ボーリング調査・トレンチ調査を実施した.トレンチ調査で,低地側に傾く泥炭層と扇状地堆積物が確認され,その傾斜も上部にいくほど緩くなる傾向が見られた.ボーリング調査でも,傾動によるGrowth strataは確認された.イベント層準は,年代測定から約6,500年前頃,5,000年前頃,3,800年前頃,2,000年前以降と推定された.

以上の結果,少なくともセグメントaでは,平均変位速度0.11m/1,000年,断層の活動間隔5,000〜6,000年と見積もられる.この調査では最新活動期は明確に出来なかったものの,少なくとも4,000yBP以降は活動していないという拘束条件は,このセグメントが「要注意断層」ということを十分に示している.