0 まえがき

北海道,石狩低地帯の中央には南北性のトレンドをもつ活断層,当別断層が知られている(活断層研究会,1991;国土地理院,1996).この断層は,最初,地質断層として垣見・植村(1958)が記載し,名称がつけられた.大内(1980)は,この地質断層の一部が,活断層であることを指摘した.大内(1980)は,当別断層が,当別川中流域の青山地域で河岸段丘を系統的に変位させている確実度Tの活断層であることを認め,地形面の変位量12m,離水年代を約3万年前と推定し,活動度をB級と考えた.その後,活断層研究会(1991)は,当別断層の南方延長の中小屋−石狩金沢の付近にも,確実度Uの活断層をみとめた.北部の当別断層とは,途中でリニアメントが途切れるものの,垣見・植村(1958)の当別断層に一致することから,この南部についても当別断層の名称を与えている.

このように,当別断層が活断層として認められてから20年余りが経過している.しかし,活断層の活動度を知るために必要な河岸段丘の編年について具体的資料はなく,断層崖の比高差や平均変位速度など活断層の活動性を示す基礎的データも不完全なままであった.したがって,活動時期・活動間隔については全く不明の状態であった.

一方,国土地理院(1996)は,南部の野幌丘陵において丘陵の東西両端にも新たに活断層(撓曲帯)を描いた.断層は,25,000分の1地形図上に表記したことで,位置を正確に知ることはできる.しかし,空中写真判読に基づくにもかかわらず確実度についての表記が全くないこと,地形面の編年に幅があること,累積変位量・平均変位速度などの活断層の諸データは未記載・未検討のままであること,など不明な点も多い.

北海道(2000)では,上記の未記載のデータを埋めるべく地表踏査をおこない,地形面の年代を決定づけるテフラや14C 年代値を報告した.その結果,当別断層のセグメントaについては,地形面の離水年代,活断層の累積変位量・平均変位速度,過去1万年間に少なくとも1回は活動していることが明らかになった.セグメントbの活動性については不明な点が多いが,地質断層の正確な位置を踏査で明らかにしたことや,その断層が少なくとも第四紀後期に活動している活断層であることは明らかにした.当別断層の南方延長,新篠津村の低地では,上記物理探査で断層に関連すると思われる地下構造が検出できた.セグメントcとした北広島市の撓曲地形(国土地理院,1996)での反射法地震探査の結果,撓曲−断層の地質構造が認められなかった.一方,セグメントdとした江別市大麻−元野幌の撓曲地形(国土地理院,1996)での反射法地震探査の結果,反射面がgrowthする進行性の傾動構造が認められた.

今年度は,活断層の活動時期・活動間隔を明らかにするため,トレンチ調査を実施した.トレンチの位置選定にあたっては,地形地質(精査)・ピット・ボーリングを実施し参考とした.本報告は,以上の調査結果をまとめ,本断層の活動性を評価するものである.

なお,報告にあたり,当別町・新篠津村・江別市・北広島市には調査にあたって便宜をはかっていただいた.記して深く感謝の意を表する次第である.