1)速度分布
表層速度分布図から,浅部の速度分布は次のとおりである.本測線での浅部の速度分布は,測線中央付近の距離260〜340m間が盛り上がったパターンを呈している.つまり,距離260〜340m間は低速度層が非常に薄く,地表浅部から高速度である.距離340mより南東側は全体に低速度層が厚い.500m/s以下の低速度層は,距離260mより北西側では地表下約5m,距離340mより南東側では10mである.距離260〜340m間は地表付近から500m/s以上の速度である.1,500m/sの速度コンターは,北西側で地表下15m前後で,南東側で25m前後と深い.距離260〜340m間では地表下10m前後と浅くなる.ボーリング11B−O1のP波検層との対比では,第1,3速度層は概ね一致するが,第2速度層は本速度分布にくらべかなり高い.
2)反射イベントの分布状況
マイグレーション深度断面図から本測線の反射パターンは次のとおりである.地表浅部を除く反射イベントはすべて北西に傾斜し,深部のイベントほど傾斜は急である.北西半の浅部では,凹凸を伴った反射イベントが認められる.南東半の浅部では明瞭な反射イベントに乏しいが,全体に地表面にほぼ平行しているように見える.距離340〜560m間の地表から深度60m付近までは明瞭な反射イベントに乏しい.その原因としては,4番通の車輌ノイズの影響か,データ処理上の問題かあるいは地質構造的なものかは現時点では必ずしも明らかではない.距離240〜360m間の標高−40〜−150mの反射イベントが上に撓んでいる.これは距離260〜340m間の速度異常のためと考えられる.つまり,周辺に比べ浅部から高速度であるため,この間を通過した波は周辺に比べ往復走時(時間)が短くなって断面図上では見かけ上浅くなる.この影響をデータ処理で除いているが,完全に補正しきれていないためと推定される.なお,マイグレーション断面図上ではこの撓みは深部のイベントほど南東側へ移動している.
3)反射断面の解釈
振幅が大きく比較的連続性の良いイベントとして浅部よりA〜Hの8反射イベントを,また,明瞭ではないが,解釈上必要なイベントとしてA’,D’を抽出した.ただし,浅部の反射イベントA〜Dは北西半でのみ追跡している.
本図には屈折トモグラフィー解析により求めた速度1,500m/sのコンター及び11B−01ボーリングの合成反射記録もあわせて示した.合成反射記録に見られる主な反射波の深度は表4.2.1のとおりである.
表3−7−4 合成反射記録の主要反射
反射イベントAは全体に凹凸が認められる.11B−01ボーリングでは細〜中粒砂とシルト質砂とに挟まれるシルト(深度)付近(第2速度層と第3速度層の境界)に対応する.
距離260〜340m間の浅部に凹状の反射イベントが見られる.図に示すように本イベントの上位10m前後は1,500m/sの高速度である.このような反射パターン,速度分布から推定して,本イベントは砂礫層に覆われた旧河道跡と考えられる.
反射イベントA’は,上位の凹凸のあるイベントと下位の成層するイベントの境界に対応し,上下で堆積環境が異なっていた可能性が推定される.11B−01ボーリングでは砂質シルトと細粒砂・シルト細互層の境界にほぼ対応する.
反射イベントBは,上位のほぼ水平なイベント,下位の本イベントに平行するイベントの境界に対応する.本図では明瞭ではないが,このパターンから推定して上位のイベントは本イベントにオンラップしている可能性が考えられる.
反射イベントB以深のイベントは,イベントC〜C’間を除いてはほぼ平行で,南東に向かって徐々に薄くなっている.イベントC〜C’間は厚さが南東に向かって急激に薄くなっている.この間のイベントはイベントC’にオンラップしているのか,あるいはイベントCにより切られているのか,あるいはその他であるのか(divergent)は,この間の反射パターンが明瞭でないため不明である.
反射イベントB以深では,連続性も良く振幅の大きいイベントD〜E間を除いては全般に振幅は小さく,連続性も良くないため,主として砂質の地層からなっていると推定される.イベントD〜E間はシルトないしは泥質の地層からなると推定される.
反射イベントEの距離400m付近からイベントHの距離480m付近にかけて反射イベントがずれないしは不明瞭となっており,この付近に断層の推定が可能である.その浅部延長部は記録の質が良くないため,地表付近まで達しているかは不明である.ただし,前述したように距離260〜340m間が周辺に比べ浅部から高速度である影響により,このようなイベントのずれなどが発生した可能性も考えられる.