(1)新篠津測線

新篠津測線では,図3−6−1で示す位置で浅層反射法地震探査1測線1200mを実施した. 

1)速度分布

図3−6−13の表層速度分布図から,浅部の速度分布は次のとおりである.

全体にほぼ水平な速度構造を呈し,地表下10m前後で500m/s,地表下30m前後で1,000m/s,地表下40m前後で1,500m/sと全体に非常に低速度である.地表から標高−40mまでは速度変化が大きいが,それ以深では緩やかな速度変化を示す.

上記速度分布は,距離800〜1050m間のコンターでは,5m前後の盛り上がりが認められる.

2)反射イベントの分布状況

図3−6−16のマイグレーション深度断面図から本測線の反射パターンは次のとおりである.

標高−70〜−80m以浅は,ほぼ水平な反射波イベントが認められる.一方,それ以深は全体に東に緩く傾斜する連続性の良い低周波の反射波イベントが認められ,深部の反射波イベントほど傾斜は急である.なお,標高−600m前後の水平なイベントはノイズと考えられる.

浅部では距離900〜950m間は,全体に反射イベントは不明瞭である.

本測線の反射イベントは全体に低周波である.これは地表付近に堆積する非常に低速度の泥炭層により高周波数成分が吸収されてしまったためと推定される.

3)反射断面の解釈

地質構造把握のため,比較的連続性の良い,または振幅の大きい反射イベントを抽出し,解釈深度断面図を作成した(図3−6−17).浅部よりA〜Fの6反射イベントを抽出した.なお,断面図では,見やすいよう白ヌキ(トラフ)の部分に色付けしているが,ここでは半波長上の黒い部分(ピーク)の反射波を意味している.

反射イベントAはボーリング11B−S1では,シルトと極細砂の境界に対比されるが,全体に連続性は良くない.本イベントは距離250m付近で深くなっている様に見受けられる.

11B−S1で礫混じり砂ないしは砂礫層の上面に対比される反射イベントBは,連続性は良くない.本イベントは速度1,500m/sにほぼ対応する.

反射イベントA,Bとも距離900〜950m間が不明瞭なため,それ以西へは追跡していない.

強振幅である反射イベントC以浅ではほぼ水平,以深では東傾斜で,本イベントを境に反射イベントの傾斜が異なる.また,反射イベントD〜F間のイベントはほぼ平行であるが,イベントC〜D間は東で厚く,西では急に薄くなっている.これらのことから本イベントは不整合面の可能性が強い.

反射イベントC〜E間は,イベントDに代表されるように全体にイベントに振幅変化や凹凸が認められることから,主として砂礫層からなると推定される.

反射イベントE〜F間は,全体にほぼ平行する強反射イベントからなり,粘土層を挟む互層と推定される.

反射イベントF以深の反射イベントは連続性に乏しく,明瞭ではない.これは地表付近の泥炭層により震源エネルギーが吸収されてしまったことも一因と考えられるが,イベントF以深は比較的均質な地層(砂やシルト?)からなるためと推定される.

測線西端の距離900〜1000m間で標高−80m付近の反射イベントCが不明瞭でかつこの付近を挟んでイベントCの傾斜が異なること,また,この付近の浅部の速度コンターが盛り上がっていることからこの付近に断層が伏在している可能性が考えられる.伏在するとすれば断面図に図示したように低角の逆断層が推定される.一方,推定した断層を挟んでイベントCに落差が認められないことから撓曲である可能性も考えられる.