3−3−1 概 要

概要としてトレンチ調査の手順を以下に示す(ピット調査の手順もこれに準する)。さらに、火山灰同定に関連する分析・測定の方法と分析結果の一覧および年代測定(14C法)についてもその結果の一覧(ピット・ボーリング調査に関連するものを含める)を示す。

a.トレンチ(ピット)調査の手順

@ 調査用地の設定

担当員の指示のもと、関係する地権者等の立ち会い、または、了解の下に調査用地の境界を確認した後、作業を開始した。トレンチの掘削に先立ち、掘削地点及び作業範囲の耕作土等を剥ぎ取り、残土置き場に適切に保管した。残土置き場では、耕作土が雨などによって流れ出さないように締め固めるとともに、防水シートで覆って保管した。なお、千歳市泉郷地区(嶮淵川沿い)のトレンチ掘削地点においては、掘削地点及び最小限の作業範囲について、地権者の了解の下に樹木の伐採を行った。また、掘削に先立って千歳市教育委員会による埋蔵文化財保護の現地立ち会いを受けた。早来町富岡地区のトレンチ掘削地点においては、作業範囲を確保するために、地権者の了解の下に1棟のビニールハウスを仮撤去した。

Aトレンチ(ピット)および周辺の測量

平板測量により、トレンチ(ピット)周辺の縮尺1/200の平面図を作成した。測量範囲は、トレンチについては75m×100m以上、ピットについては30m×30m以上とした。標高は最寄りの基準点あるいは独立標高点を基準にして求めた。平面図には、仮基準点、トレンチ(ピット)位置、目印となるもの、その他必要な現況を正確に記録し、地形については0.5mごとの等高線を表示した。トレンチ(ピット)を掘削した4地区の実測平面図を図3−3−5図3−3−12(トレンチ調査関係)および図3−1−3−1図3−1−3−5(ピット調査関係)に示す。

Bトレンチ(ピット)の掘削

トレンチ(ピット)の掘削箇所及び掘削残土保管場所を定め、重機を用いて指定された箇所にトレンチ(ピット)を掘削した。トレンチの掘削規模は、千歳市泉郷地区(嶮淵川沿い)が長さ27m×幅13m×深さ4m、法面傾斜45゚程度、早来町富岡地区が長さ14m×幅11m×深さ4m、法面傾斜40゚程度、ピットの掘削規模は、岩見沢市緑が丘地区が長さ20m×幅5m×深さ4m、法面傾斜70゚程度、千歳市泉郷地区(いずみ学園東方)が長さ18m×幅5m×深さ3m、法面傾斜60゚程度である。 トレンチ(ピット)には、観察期間中の雨水・湧水処理のため、掘削底面に釜場を設け、ポンプを用いて排水した。排水に当たっては、取水溝、農地等に砂泥が流入しないように対処した。

C掘削土の保管

掘削した土砂は、耕作土と区分して別に保管した。掘削土砂は、降雨による流出・崩壊がないように、また、埋め戻しに支障がないように、防水シートで覆い保管した。掘削箇所及び残土保管場所は、第三者に危険が及ばないように、虎ロープ等で周囲を囲むとともに、立入禁止の表示を行った。

D整形・グリッド設置

掘削したトレンチ(ピット)の法面については、出入り口として使用する面を除いて、詳細な地質観察ができるように、人力で余分な土砂を除去し、平滑に整形した。整形した法面に、観察・スケッチの座標として、水糸により1mメッシュのグリッドを設けた。グリッドの設置に当たっては、まず法面にレベルを用いて水準線を設置し、それに直交する鉛直方向の基準線を1m間隔で設定した。法面の形状が異なる箇所では、鉛直方向の基準線が常に鉛直方向を向くように補正した。次に、鉛直方向の基準線に直交する水平な基準線を1m間隔で設置し、グリッドを作成した。また、基準となる5m毎の水糸は、異なった色調のものを使用した。

E写真撮影

グリッド設定後に法面の写真撮影を実施した。また,重要と思われる箇所について、拡大写真等を撮影した。

F法面観察・スケッチ

整形・グリッド設置を行った法面について詳細な観察を行い、縮尺1/20のスケッチを作成した。法面観察・スケッチの範囲は整形した法面の全面とした。

スケッチの作成に当たっては、肉眼で識別可能で、かつ、所定の縮尺でスケッチに表現できる精度の単層ごとに地層を区分し、単層毎に層相、堆積構造を記載し、単層境界の形状、変形構造、層位関係、断層、亀裂、液状化跡、人工的な乱れ、動植物遺体、考古遺物等について、詳細に観察して記載した。

これらの観察結果をもとに、単層間の不整合、単層と断層の切り合い関係、層準による変形の違い等を総合的に判断し、断層活動の痕跡及びイベント層準を認定した。

G試料採取

各法面の地質観察、スケッチ、写真撮影が終了した後、担当員との協議の上で、年代決定が必要とされる層準から14C年代測定試料を採取した。また、必要な場合には、地層の年代決定に有効な火山灰や花粉分析の試料についても、採取を行った。採取した試料は、トレンチ名、採取位置、試料番号等を明記したビニール袋に収納し(14C年代測定試料については、アルミ箔でくるんだ後、ビニール袋に収納)、試料採取位置及び試料番号をスケッチ図に記入し、整理が終了後、速やかに各測定機関に送付して、測定を依頼した。

Hトレンチ(ピット)平面図の作成

平板測量により、トレンチ(ピット)の位置、形状および調査対象法面の位置、形状を把握し、上記(2)で作成した縮尺1/200の平面図に記入した。掘削したトレンチ(ピット)の位置、形状等を図中に示した。

I埋め戻し・用地の復旧

トレンチ(ピット)及びその周辺を平面図、写真に基づいて、調査前の状況に復旧した。トレンチ(ピット)の埋め戻しは、掘削土砂を転圧し十分に突き固めながら慎重に行った。耕作土の復旧は、地盤が十分に固まったことを確認した後、担当員の承認を得て行い、復旧後に地権者の承認を得た。復旧作業終了後は、直ちに仮設物・工事機器等を撤去した。

J現場管理及び現地調査本部

トレンチ(ピット)の周囲には安全柵を設置し、主な進入路には足場等を設置した。掘削したトレンチ(ピット)については、法面の崩壊を避けるために、法面の保護、流入水の防止、湧水の排水を行った。また、夜間、降雪・降水時には防水シートで法面を覆って保護した。

千歳市泉郷地区(嶮淵川沿い)及び早来町富岡地区のトレンチ近傍には、ユニットハウスの現地調査本部を設置した。調査本部には机・椅子等を配置し、仮設トイレを設置した。また、調査用地の出入り口には、調査名、調査期間、発注者名、受託者名、現場責任者名、連絡先等を明記した看板を設置した。

b.火山灰分析・年代測定の方法と結果

断層の活動時期を知る目的で、トレンチ(ピット)やボーリングコアで観察された地層の年代を明らかにする必要がある箇所について、試料を採取して、分析・年代測定を実施した。分析・測定項目としては、年代が明らかなテフラとの対比を行うために火山灰分析を、地層の年代を直接求めるために14C年代測定を行った。火山灰分析の方法の原理等の詳細は簡潔に図表として示す(図3−3−1図3−3−2図3−3−3)。なお、14C年代測定の方法の詳細については省略する。

@火山灰分析結果

泉郷地区(嶮淵川沿い)トレンチ1層準、泉郷地区(いずみ学園東方)ピット2層準、富岡地区トレンチ2層準の計5層準から試料を採取して火山灰分析を行った。試料一覧および火山灰同定結果を図3−3−4に一括して示す。なお、ピット調査関連の試料の分析・測定結果についてはV.1.3で報告した。

A14C年代測定結果

14C年代測定結果を表3−3−1表3−3−2に示し、測定方法の詳細については省略する。

図3−3−1 火山灰分析・測定のフローチャート

図3−3−2 火山ガラスの形態分類法および鉱物組成分類方法

図3−3−3 温度変化型屈折率測定の概念図

図3−3−4 火山灰屈折率測定・火山ガラス形態分類・鉱物組成分析結果一覧

表3−3−1 火山灰分析・測定および14C年代測定の試料一覧(ピット・ボーリング・トレンチ調査)

表3−3−2 14C年代測定結果(ピット・ボーリング・トレンチ調査)