3−2−2 千歳市泉郷地区(嶮淵川沿い)

a.ボーリング調査経過

リニアメントに直交する南西−北東方向にボーリング測線を配置し、はじめにリニアメントを挟んだ南西側に泉郷No.1孔を、北東側に泉郷No.2孔を掘削した。この2孔の地層対比から、2孔間に断層が推定されたため、さらに断層の位置を絞り込む目的で、2孔間の泉郷No.1孔寄りに泉郷No.3孔を、泉郷No.2孔寄りに泉郷No.4孔をそれぞれ掘削した。結果として、本地区においては,南西側から泉郷No.1孔、泉郷No.3孔,泉郷No.4孔、泉郷No.2孔の4孔のボーリングが掘削された。各ボーリングの掘削位置を図3−2−3に示す。掘削深度は、泉郷No.1孔が11.00m、泉郷No.2孔が13.00m、泉郷No.3孔が10.00m、泉郷No.4孔が12.00mである。

b.孔井地質

@泉郷No.1孔(孔口標高:18.79m、掘削深度11.00m)

深度0.00〜0.84m:耕作土及び黒ボク土からなる。いずれも人為的な攪乱を受けており、本層中にはTa−aおよびTa−bの軽石が混入している。(耕作土)

0.84〜2.21m:主として径1〜15mm(最大35mm)の軽石から構成される。上部の軽石は風化が進み、粘土化している。軽石は有色鉱物を多く含み、基質に黒色岩片を多く含む。また、顕著な葉理が認められないことから降下軽石層と推定される。以上の特徴から、本層はEn−aに対比される。(U層)

2.21〜4.58m:本層の上部は火山砂と火山灰質シルトの互層からなり、下部の深度3.86〜4.58mは軽石混じりの粗粒サイズの火山砂からなる。全体に軽石が多く混じる。軽石は径2〜5mm(最大30mm)で、繊維状に良く発泡し,有色鉱物を含まない。本層に含まれる軽石の多くは、Spfl)テフラの軽石に対比される。また、本層以深の地層は、水成堆積物と判断される。(Va層)

4.58〜5.93m:主として砂礫からなる。径2〜25mm(最大50mm)の頁岩の円礫を多く含む。本層の基底部には、有色鉱物を含む径2〜5mmの軽石が二次堆積状に分布する。(Wd層)

5.93〜6.14m:腐植質シルトを挟む。

6.14〜6.62m:径2〜7mmの白色軽石を多く含む。軽石は有色鉱物を少量含む。基質には有色鉱物を多く含み、ゴマシオ状を呈する。本層の軽石はクッタラ第1(Kt−1)に対比される可能性が高い。

6.62〜7.37m:腐植質シルトを挟む。(We層)

7.37〜8.11m:砂礫からなる。径10〜70mmの頁岩の円礫を含み、基質は中粒〜粗粒砂。

8.11〜11.00m:淘汰の良い細粒砂岩からなる。傾斜45〜60°に傾斜したシルト薄層を数枚挟む。本層は固結度が高く、層相および地質構造から新第三系の追分層に対比される。(Y層)

電気検層による比抵抗値(ρ=25cm)は、耕作土、深度0.84〜2.21mの軽石層、深度4.58〜5.93mの礫層で高く、深度6.14〜6.62mの軽石層、深度7.37〜8.11mの礫層でやや高い。深度2.21〜4.58mの火山砂と火山灰質シルトの互層、深度5.93〜6.14mの腐植質シルト、深度6.62〜7.37mの腐植質シルトで低い。新第三系は細粒砂岩ではやや高い値を示すが、シルト薄層の挟在部では低い値を示す。また、新第三系の上限付近にも低い値を示す箇所がみられる。

A泉郷No.2孔(孔口標高:11.82m,掘削深度13.00m)

4本のボーリングのうち最も北東側に位置するボーリングで、リニアメント北東側の沖積低地上に位置している。

深度0.00〜0.60m:黒ボク土および泥炭を起源とする耕作土である。植物根を多く含み、径2〜3oの黄橙色軽石が点在する。(耕作土)

0.60〜0.85m:主として径2〜10mmの軽石から構成される。軽石は有色鉱物をほとんど含まない。上部の厚さ10cm程度は、軽石が上部から酸化して黄橙色を呈する。径1〜2mmの灰色火山岩片を10〜20%程度含み、逆級化がみられる。中部の厚さ6cm程度は珪長質鉱物、火山岩片を多く含む。下部の厚さ9cm程度は灰色火山岩片を30〜40%含み、正級化がみられる。本軽石層は、Ta−aの軽石に対比される。

0.85〜1.28m:主として泥炭からなる。深度0.87〜0.93mに中粒〜粗粒砂を挟む。深度1.00〜1.05mは黒ボク土質である。深度1.15〜1.20mに径2〜15mmの軽石を含む。(T層)

1.28〜3.05m:軽石を含む火山灰質中粒砂からなる。径1〜20mmの灰白色軽石を含み、基質には有色鉱物からなる中粒〜粗粒砂を多く含み、細礫サイズの火山岩片も含む。軽石はEn−aテフラの軽石に対比される。(U層)

3.05〜4.15m:灰白色の軽石質火山砂からなる。径1〜10mmの灰白色軽石を多く含む。軽石は繊維状に良く発泡し、有色鉱物は目立たない。円磨された軽石も見られる。基質はシルト〜粗粒砂サイズの珪長質鉱物、有色鉱物を含む火山砂からなる。灰〜緑色の火山岩片を含む粗粒砂を挟む。Spflの軽石を多く含む二次堆積物と推定される。(Va層)

4.15〜4.23m:極細粒〜細粒砂サイズの暗黄灰色火山灰からなる。

4.23〜4.83m:主として砂礫からなる。礫は円磨された頁岩を主体とし、軽石をわずかに含む。上部は腐植質で木片を多く含み、径2〜3mmを主体とする。下部は径10〜40mmの灰色の円礫〜亜円礫を主体とする。(Vc層)

4.83〜6.05m:Spflの軽石からなる軽石層を主体とする。軽石は径3〜20mmで繊維状に良く発泡し、軽石中には有色鉱物が目立たない。本層の上部には灰色の火山岩片を10%以下含む。深度5.23〜5.34mは径2〜30mmの緑色頁岩の円礫を主体としている。(Wa層)

6.05〜6.15m:径5〜30mmの頁岩円礫を主体とする砂礫からなる。(Wd層)

6.15〜6.61m:黒褐色の腐植質シルト中に厚さ25cm程度の暗緑灰色中粒砂を挟む。腐植質シルト中には径1〜3mmの白色軽石が散在する。中粒砂は淘汰が良く、逆級化がみられ、最上部に粗粒砂 を伴う。

6.61〜7.60m:暗オリーブ灰色の細粒〜粗粒砂からなる。粗粒砂は微細な軽石が混じり、ゴマシオ状を呈する。(We層)

7.60〜8.70m:粗粒砂〜砂礫からなる。礫は径2〜30mmの頁岩円礫を主体とする。(Wg層)

8.70〜13.00m:主としてオリーブ灰色のシルト〜粘土と細粒砂との互層からなり、ほぼ水平な葉理がみられる。砂の淘汰は良好である。深度9.32〜9.36mに白色軽石および径2〜30mmの頁岩円礫を含む。深度9.90〜10.25mに細粒〜粗粒砂を挟み、砂層中に厚さ5mm程度の腐植層を数枚挟む。また、砂層中には径1〜2mmの白色軽石が散在する。深度11.83〜12.14mには径2〜3mmの円磨された軽石,径5〜20mmの頁岩円礫を含む。本層は上位の第四系に比べ良く固結していることから、やや古い地層と考えられるが、No.1孔の深度8.11m以深に分布する追分層に比べると、やや軟質で炭質物を含むことで、層相が異なっている。(X層)

 電気検層による比抵抗値(ρ=25cm)は、耕作土,深度3.05〜4.15mの軽石質火山砂,深度5.23〜5.34mの礫層、深度7.60〜8.70mの粗粒砂〜砂礫で高く、深度8.70m以深のシルト〜粘土・細粒砂互層で低い。また、深度1.28〜2.00mの火山灰質中粒砂,深度4.15〜4.23mの極細粒〜細粒砂サイズの火山灰、深度6.15〜7.26mの腐植質シルト〜細粒砂でやや低い。

B泉郷No.3孔(孔口標高:14.54m,掘削深度10.00m)

4本のボーリングのうち南西側から2番目に位置するボーリングで、リニアメントとして認定される急斜面の途中で掘削したボーリングである。

深度0.00〜0.16m:黒ボク土質の耕作土である。人為的に攪乱されており、径2〜8mmの黄橙色軽石を含む。(耕作土)

0.16〜1.34m:径2〜15mmの白色軽石(Spfl)を含むシルトおよび細粒〜粗粒砂からなる。軽石は繊維状に良く発泡し、有色鉱物は目立たない。基質も火山灰質である。本層の上部は酸化が進み褐色を帯びるが、新鮮部では灰色〜緑灰色を呈する。深度0.55〜0.88mは中粒〜粗粒砂サイズの灰〜黒色岩片を多く含む。(Va層)

1.34〜1.59m:腐植質極細粒〜細粒砂からなる。径1〜2mmの軽石が混じる。軽石は繊維状に良く発泡し、有色鉱物はみられない(Spflの軽石)。

1.59〜2.28m:軽石質火山灰からなる。径1〜7mmの軽石(Spfl)を主体とし、基質は極細粒〜粗粒砂サイズの火山灰からなる。基質には径1mm程度の輝石粒子が目立つ。(Wa層)

2.28〜2.80m:軽石質砂礫からなる。径1〜30mmの緑色頁岩の円礫とほぼ同径の軽石を含み、基質は細粒〜粗粒砂サイズの岩片および火山灰からなる。基質には径1mm程度の輝石粒子が目立つ。(Wd層)

2.80〜3.09m:腐植質シルトからなる。径2mm程度の軽石,木片が混じる。軽石は、繊維状に良く発泡している(Spfl)。

3.09〜4.00m:径2〜4mmの白色軽石を主体とする軽石層で、ほぼ水平な葉理が見られる。軽石中には極少量の有色鉱物を含む。部分的に腐植質である。深度3.71〜3.77mに粗粒砂サイズの珪長質鉱物を主体とする火山砂を挟む。深度3.80〜3.91mには腐植質シルトを挟む。腐植質シルトの上下境界は傾斜50°でシャープに境されている。

4.00〜4.16m:黒褐色の腐植質シルトからなる。層理はほぼ水平である。(We層)

4.16〜4.30m:緑灰色の極細粒砂からなる。シルト分を含む。

4.30〜4.41m:緑灰色の細粒〜粗粒砂からなる。ほぼ水平な葉理が見られ、全体として逆級化している。

4.41〜6.20m:主として砂礫からなる。径2〜30mmの頁岩円礫を含み、基質は粗粒砂からなる。最下部に径30〜60mmの基底礫を伴う。(Wg層)

6.20〜10.00m  主として礫混じりの中粒砂岩からなる。厚さ数10cmの礫密集部がみられるが、層理は不明である。礫密集部には径5〜50mmの頁岩の亜円〜亜角礫を含む。また,中粒砂岩中には径2〜3mmの頁岩円礫が混じる。(Y層)

 電気検層による比抵抗値(ρ=25cm)は、耕作土、深度5.31〜6.20mの礫層部で高く、深度2.80〜3.09mの腐植質シルト、深度3.80〜4.16mの腐植質シルト卓越部、深度7.35m以深の中粒砂岩で低い。また、深度1.59〜2.28mの軽石質砂礫部、深度3.09〜3.80mの軽石層でやや高い。また、深度6.20〜7.35mの礫岩部もやや高い。

C泉郷No.4孔(孔口標高:11.96m,掘削深度12.00m)

 4本のボーリングのうち南西側から3番目に位置するボーリングで、リニアメントの北東側近傍の沖積低地上で掘削したボーリングである。

深度0.00〜0.42m:黒ボク土および泥岩を起源とする耕作土である。径5〜35mmの黄橙色軽石(En−a)が点在する。(耕作土)

0.42〜0.61m:泥炭からなり、植物根を多く含む。

0.61〜0.75m:径2〜6mmの白色軽石からなる。逆級化がみられる。本層はTa−aに対比される。

0.75〜0.95m:泥炭からなり、木片を含む。(T層)

0.95〜1.98m:軽石混じり泥炭からなる。軽石が散在〜層状に濃集する。軽石は径2〜10mmで、白色から黄橙色を呈し,有色鉱物を多く含む。本層の軽石はEn−aの軽石に対比される。1.83〜1.88mには軽石および火山砂を多く含む。(U層)

1.98〜2.65m:緑灰色の軽石質火山灰からなる。軽石は径2〜10mmの繊維状に良く発泡した白色の軽石が多い。基質はシルトサイズの緑灰色の火山灰からなる。本層は主としてSpflを起源とする二次堆積物と推定される。(Va層)最下部の基質中に輝石の巨晶が濃集している。(Vb層)

2.65〜3.83m:泥炭〜腐植質中粒砂〜砂礫からなる。上部の深度2.65〜2.85mは黒色の泥炭からなり、生木様の木片を含む。中部の深度2.85〜3.24mは黒褐色の泥炭質細粒〜粗粒砂からなる。木片を含み、淘汰が悪い。径2〜15mmの白色軽石(Spfl)が混じる。下部の深度3.24〜3.83mは径3〜15mmの軽石及び径5〜20mmの頁岩円礫を含み、基質は細粒〜粗粒砂からなる。(Vc層)

3.83〜3.90m:褐灰色の腐植質火山灰である。下位層から連続する細粒砂サイズの火山灰からなる。

3.90〜4.70m:主として灰色の軽石質火山灰からなる。径1〜5mm程度の白色軽石を多く含む。軽石は繊維状に良く発泡し、有色鉱物が目立たないことからSpflの軽石に対比される。基質はシルトサイズの火山灰からなる。全体に淘汰が不良である。(Wa層)

4.70〜5.92m:上位に連続する軽石質火山灰中に径数mmの頁岩円礫が混じる。5.51〜5.60mは腐植質となっている。また,5.60〜5.64mには、径1〜2mmの輝石粒子が目立つ。5.69〜5.92mは径5〜35mmの繊維状に良く発泡した白色軽石を主体としている。(Wd層)

5.92〜6.67m:黒褐色の腐植質シルト中に軽石密集部を厚さ1〜5cm程度の層状に含む。軽石は径1〜4mmの白色軽石で有色鉱物をを少量含む。

6.67〜7.04m:径2〜7mmの白色軽石を主体とする。軽石は有色鉱物を少量含む。

7.04〜7.50m:黒褐〜灰褐色の腐植質シルトからなる。上部は強腐植質であるが、下に向かって弱腐植質となる。7.35〜7.44mに淘汰の良い細粒砂を挟む。

7.50〜8.05m:主として中粒〜粗粒砂からなる。珪長質鉱物と輝石粒子を含み、ゴマシオ状を呈する。(We層)

8.05〜8.93m:主として砂礫からなる。径3〜20mm(最大70mm)の頁岩の亜角〜円礫を含み、基質は粗粒砂からなる。(Wg層)

8.93〜12.00m:主としてオリーブ灰色の粘土〜シルト・細粒〜中粒砂・砂礫の互層からなる。ほぼ水平な葉理が見られる。礫は径2〜15mm(最大30mm)の黒色頁岩の円礫からなる。中粒砂は淘汰良好である。粘土〜シルト中には砂層薄層を挟み、部分的に泥炭を薄片状に挟む。深度11.15〜11.16mおよび深度11.41〜11.46mには径1mmの白色軽石が層状に密集する。(X層)

電気検層による比抵抗値(ρ=25cm)は、耕作土および深度3.83〜5.10m付近の軽石質火山灰で高く、深度5.92〜6.67mの腐植質シルト、深度7.04〜7.50mの腐植質シルト、深度11.15m以深の粘土〜シルトで低い。また、深度1.98〜2.65mの軽石質火山灰、深度8.05〜8.93mの砂礫および深度8.93〜9.81mの砂礫でやや高い。

c.年代測定など

No.4孔の深度3.9〜4mのSpfl直上部分の腐植質シルトを試料(Iz−B−C10)として採取し、14C年代を測定した結果、表3−3−2および図3−2−28に示すように、20,050±110yBPの値を得た。これはテフラとの関係および後で行ったトレンチ調査の地層との対比において妥当であった。

図3−2−3 千歳市泉郷地区ボーリング調査箇所(嶮淵川沿い)の測量図

位置は図3−1−3−5に示す。

図3−2−4 嶮淵川沿いボーリング調査状況写真集1

図3−2−5 嶮淵川沿いボーリング調査作業状況写真集2

図3−2−6 嶮淵川沿いボーリング調査作業状況写真集3

図3−2−7 嶮淵川沿いボーリング調査コア写真1(泉郷No.1、No.2)

図3−2−8 嶮淵川沿いボーリング調査コア写真2

図3−2−9 ボーリング柱状図その1(泉郷No.1)

図3−2−10 ボーリング柱状図その2(泉郷No.2)

図3−2−11 ボーリング柱状図その3(泉郷No.3)

図3−2−12 ボーリング柱状図その4(泉郷No.4)

図3−2−13 嶮淵川沿いボーリング調査柱状対比断面図と試料採取位置