(2)千歳市泉郷地区

a.地形面とその堆積物

前年度の地形地質調査(概査)では、本地区について沖積面を含めて4面を認定していたが今回の調査では、地形断面解析などを行い、5面に区分した。それらは、上位より、高位段丘面、中位段丘面、低位段丘面、最低位段丘面および沖積面である(図3−1−2−7)。

高位段丘面は嶮淵川の南西側では丘陵の尾根沿いに標高50〜60m±で分布し、泉郷断層に沿って東落ち約20mの明瞭な変位を示している。その他、嶮淵川の北東側の南長沼断層より東側にも分布する。いずみ学園南東のピット箇所も本面の上に存在しており、そこでは断層を伴ってS字状に変位する段丘堆積物の存在が確認された。本地区の範囲外では、顕著な活断層露頭が出現したコムカラ峠の面に続く。

中位段丘面は沖積面を除くと最も広い分布がある。嶮淵川より南西側では主に、高位段丘面の西側に分布するが、標高は30〜40m±である。泉郷断層により直接的に変位を受けている所はないようである。同川より北東側では標高30m±で分布し、泉郷断層により東落ち5m±の変位を分布域の中軸部で受けている(前年度報告)。東寄りでは南長沼断層(主スラスト)の西上がりの運動の影響で東上がりの傾向がある。

低位段丘面は主に、嶮淵川の南西側で、中位段丘面より西側に分布があり、標高は20m±〜30m弱である。一般的に西に傾動する傾向があるが、分布の北縁部では間に沢をはさみ、その沢部でやや沈降し、波状にうねっている。この現象(泉郷断層とその西側の波状のうねり)は石狩低地東縁断層帯南部の馬追断層と嶮淵断層の関係に類似している。分布の北東端では泉郷断層により8mの変位を示している(前年度報告、図3−1−2−10の下段写真)。その他、同川の北東側でも、台地の縁にわずかに分布するようである。

最低位段丘面は現河床からの比高が数mであり、嶮淵川南西側丘陵の西端では西に傾動する。

各地形面に関係する堆積物については図3−1−2−8に示した。表示されている柱状図は千歳地区表層地質調査報告書(岡,1998)による。最低位段丘堆積物にはEn−aを伴わず、いわゆる沖積段丘(完新世)である。

b.新第三系

新第三系はまず、泉郷断層沿いの隆起部に分布する(図3−1−2−10写真)。分布の主体は後期中新世の追分層であり、図3−1−2−9のルート柱状図に、その岩相および構造(西に急傾斜)を示す。その他、トレンチ箇所付近で前期中新世後半〜中期中新世前半の滝の上層がわずかに分布する。この付近で時代差のある追分層と滝の上層が近接していることは、泉郷断層とは別の地質断層がこの付近に存在することを示唆している。南長沼断層より東側には滝の上層が向斜状構造をとって広く分布している。

c.活断層露頭

活断層露頭および関連露頭がいずみ学園南東の道々峠付近の道路両側に存在している。そのうち、北側の露頭は前年度報告で紹介した。活断層そのものの露頭ではなく、活断層の活動により二次的な変形により生じた正断層を示す露頭である。一方、南側の露頭は畑地拡張により今年度になり、できた露頭で、En−aとその上位の腐植層の一部明らかに切る逆断層が検出された(図3−1−2−11写真)。そのため、腐植層について14C年代測定を6試料について行った(表3−1−2−1)。詳しい試料採取位置は図3−1−3−10に示す。重要な露頭であり、ピット調査の効率性と効果を考慮して、既存露頭の掘り下げという形で、引き続きピット調査を行った。結果の詳細はピット調査およびトレンチ調査の結果と合わせて後で述べる。

【文献】

岡(1998):千歳地区表層地質調査報告書.121p.、北海道開発局農業水産部・北海道立地下資源調査所.

図3−1−2−7 千歳市泉郷地区の地形・地質精査図(1/5,000で作成のものを1/10,000に縮図)

図3−1−2−8 千歳市泉郷地区の露頭地質柱状図およびスケッチ

図3−1−2−9 千歳市泉郷地区の追分層ルート柱状図

図3−1−2−10 千歳市泉郷地区露頭など写真集1

図3−1−2−11 千歳市泉郷地区露頭など写真集2

表3−1−2−1 千歳市泉郷地区の年代測定結果