(1)長沼地区(長沼市街東側台地)

長沼地区では長沼市街東側台地に大規模な砂利採取場があり、20年数年前より露頭が出現しているが、年々採掘にともなってその形状が変化し、古い調査研究報告に示された模式的な露頭そのものも消失してしまう状態にあるが、今回、新たに出現した数箇所の露頭観察を行ったので、以下に説明する。 

 従来、本地区についての最も詳しい調査は、近藤・五十嵐(1987)が、砂利採取に関連したボーリング調査の一環で行っている。台地を刻む河川沿いの低地からのボーリング(No.5孔、20m長)のコア試料などを解析し、花粉分析・火山灰分析などを行い、図3−1−2−2に示すような層序を明らかにし、深度1.25〜16.35m間の地層の下半部(UM−U〜W)は苫小牧東部の厚真地域の早来層に対比できるとしている。この下半部の地層は全体として含貝化石層(海成)であり、赤松(1987)は山根川層と呼び、温暖水系の豊富な貝化石群を報告している(図3−1−2−3の写真)。現在、写真に示す露頭は砂利採取が進み消失しているが、今回の調査では、図3−1−2−3の中・上段の露頭の南方の砂利採掘部(図3−1−2−3の下段の写真)で図3−1−2−2のNa−L.2の柱状図に示すような層序を確認した。台地のトップから22.4m以下は西に急傾斜する砂礫岩層で、これは明らかに後期中新世の追分層である(@層)。さらに、17m付近〜22.4m間は生物かく乱作用を受けた泥質岩(薄層理あり)で、様子としては近藤ほかのUM−U〜Wまたは赤松の山根川層の下部に類似している(A層)。ただし、貝化石は、ここでは確認できなかった。4.5〜17m間は、全体として泥炭〜泥炭質泥を頻繁にはさむ火山灰質の砂・泥相であり、レンズ状の砂礫層と互層しており、湿地+河川的環境の堆積物とみなされる(B層)。さらに、トップから4.5mまでは表層の腐植土と陸成の火山灰質(軽石にとむ)の泥・砂層である(C層)。B層の中部には厚さ2m±の厚い泥炭層がはさまれ、良く連続している。その直下付近の露頭状況を図3−1−2−4の中〜上段の写真に示すが、スコリア混じりの軽石質砂をはさんでいる。B層の最上部付近にはさまれる一次的な堆積とみなされる火山灰層について分析を行ったが(図3−1−2−6)、既知のものに同定できず、今後の検討を要する。以上一連の堆積物は現時点では、中位段丘面の堆積物と考えているが(図3−1−2−1図3−1−2−5の地形地質精査図および断面図)、従来の見解は近藤ほかおよび赤松はA層について、早来層に対比でき中期更新世としている。ところで、本地区では図3−1−2−1図3−1−2−2に示すように、高位段丘とその堆積物が、これとは別に存在している。よって、石狩低地東縁断層帯全域の活断層図を完成させるためには、地層・地形面対比の上でなお検討すべきことがあるといえる。

【文献】

近藤務・五十嵐八枝子(1987):松井愈教授記念論文集、95−103.

赤松守雄(1987):地質学雑誌、93、809−821.

図3−1−2−1 長沼地区の地形・地質精査図(1/5,000で作成を1/10,000に縮図)

図3−1−2−2 長沼地区の露頭地質柱状図およびスケッチ

図3−1−2−3 長沼地区露頭写真集1

図3−1−2−4 長沼地区露頭写真集2

図3−1−2−5 長沼地区の東西断面図

図3−1−2−6 長沼地区関連火山灰分析結果