(2)まとめ

以上各孔の調査結果を基に地質断面図を作成したが(図3−3−17),本地区のボーリング結果を要約し考察を行うと,以下のようになる.

@)地質は下位から新第三系,更新統および沖積層からなる。新第三系は東側では中新統の追分層の泥岩からなり,西側は鮮新統の清真布層の砂岩からなる.

A)新第三系を不整合で被覆する更新統は,緑ケ丘地区の更新統と異なり火山灰をあまり含まない.このことから当初,本地区の更新統は緑ケ丘地区のものより新しいとみなしたが,緑ケ丘地区のボーリング結果では更新統中には洞爺火山灰がはさまれていることが明らかになり,本地区の更新統が断層により変位をこうむつている可能性が高いことを合わせて考慮すると,少なくとも洞爺火山灰よりは古く,10万年前より以前のものとみなされる.

B)地質構造的には,新第三系の追分層は西側に60゚程度で傾斜していると判断される.清真布層の構造は不明であるが,緑が丘地区と同様に撓曲している可能性が考えられるる.新第三系を直接被覆する更新統は,西側に数度程度の極緩い角度で傾斜している.最上位の沖積層はほぼ水平に堆積している.

C)新第三系上限面(更新統基底面)の深度をみると,H−2孔およびH−3孔の間で10m程度の高度差が認められる.H−2孔の新第三系を構成する地層は鮮新統の清真布層の砂岩で,一方,H−3孔のそれは中新統の追分層の泥岩からなり,両者の間で岩相が異なること,想定される断層の傾斜を低角度東傾斜の逆断層とすると,H−2孔およびH−3孔間は断層(リニアメント)の延長部に相当することから,上記H−2孔およびH−3孔間に想定される高度差は,断層による鉛直隔離であると判断される.岩見沢−栗沢断層の南側延長に位置する泉郷断層で観察されている断層は,20゚〜30゚の西側に傾斜する逆断層で,第四系には引きずり(drag)によると判断される撓曲構造が認められる.このことから,本調査地区の断層も同様に30゚程度で西側に傾斜する逆断層であると考えられる.断層の変位量(鉛直隔離)は,上述したように,新第三系上限面(更新統基底面=砂礫層基底)で10m程度,その上位に分布する砂礫層基底で3.5m程度となっている.断層面の傾斜を30゚と仮定すると,傾斜隔離はそれぞれ20mおよび7m程度となる.一方,断層の上方延長部は,H−3孔付近に連続すると判断されるが,H−3孔には断層は認めらないこと,また,H−2孔およびH−3孔間の沖積層の基底の砂礫層を対比すると,両者はほぼ水平に連続していることから,断層は沖積層基底に変位を与えていないと判断される.