(1)ボーリング状況と地質判定

リニアメントを挟んで西側に2孔(H−1孔およびH−2孔),東側に3孔(H−3孔,H−4孔およびH−5孔)の計5孔のボーリング孔を掘削した.日の出地区のボーリング調査位置を図3−3−1に,地質柱状図を図3−3−2図3−3−3図3−3−4図3−3−5図3−3−6に,電気検層記録(比抵抗)を図3−3−7および図3−3−8に,ボーリング状況(電気検層)およびコアの写真を図3−3−9図3−3−10図3−3−11図3−3−12図3−3−13図3−3−14図3−3−15図3−3−16に示す.

@H−1孔(孔口標高:19.96m,掘削深度:30.00m,図3−3−2

リニアメントの最も西側で掘削したボーリング孔で,断層西側(西側隆起の逆断層と判断されるため上盤側)の地質層序を確実に把握するため,100%のコア採取を目指し無水掘削で掘削した.

地質構成は,以下のとおりとなっている.

★0.00〜4.50m:主として上部は粘土,下部は砂〜砂礫からなる。全体にやや軟質で腐植物を混入する。1.55〜1.58mおよび2.63〜2.65mに火山灰質砂を挟在する.沖積層(完新統)に相当するものと判断される.

★4.50〜18.50m:上部は比較的硬質で均質な粘土からなる.下部の砂礫との境界付近では,やや砂質となる.下部は主として砂礫からなる.礫は砂岩,安山岩,頁岩,珪質岩等で,部分的にシルト質粘土を挟む.4.60〜4.65mに腐植物が認められる.上位の沖積層に比較して硬質で,更新統の下位段丘堆積物あるいは茂世丑層に相当すると判断される.

★18.50〜30.00m:灰色を呈する均質な砂岩からなり,部分的に雲母片を含む.新第三系鮮新統の清真布層(峰延層)に相当する地層であると判断される.

AH−2孔(孔口標高:20.06m,掘削深度:20.00m,図3−3−3および図3−3−7

H−1孔の東側128.0mの地点で,断層の上盤側を掘削した.粘土〜シルトについては三重管を用いて,砂〜砂礫については無水掘削によりコアを採取した.本孔については,日の出地区のリニアメント東側(断層上盤側)の代表孔として電気検層を実施した(図3−3−7).

地質構成は,以下のとおりとなっている.

★0.00〜5.55m:主として上部は粘土,下部は砂〜砂礫からなる.全体にやや軟質である.上部の粘土〜シルトは全体に腐植物が含有され,特に3.58m付近には多く認められる.1.10〜1.13mに黄褐色火山灰質シルトを挟在している.沖積層(完新統)に相当するものと判断される.

★5.55〜16.90m:上部は,主として比較的硬質で均質な灰色〜暗灰色を呈する粘土質シルトからなる.下部は主として砂〜砂礫からなり,部分的に層厚30p以下の粘土〜シルトを挟在する.礫層を構成する礫は,安山岩,砂岩,頁岩,泥岩等で,礫径は2〜30o程度あることが多い.12.10〜12.13mに腐植物の薄層を挟在する。上位の沖積層に比較して硬質で,更新統の下位段丘堆積物あるいは茂世丑層に相当すると判断される.

★16.90〜20.00m:暗灰色を呈する細粒砂岩からなる.層理・葉理等の構造は認められない.新第三系鮮新統の清真布層(峰延層)に相当すると判断される.

電気検層の結果によると,高比抵抗を示す部分は砂礫層に,低比抵抗の部分は粘土〜シルト層に対応していており,深度5〜6m付近の高比抵抗部は沖積層基底の礫層に,深度12〜17m付近の高比抵抗部は更新統基底の礫層に対応している.

BH−3孔(孔口標高:21.10m,掘削深度:30.00m,図3−3−4

H−2孔の東側47.5mの地点で,断層の下盤側を掘削した.粘土〜シルトについては三重管を用いて,砂〜砂礫については無水掘削によりコアを採取した.

地質構成は,以下のとおりとなっている.

★0.00〜1.00m:径2〜10o煉瓦片を含み盛土の可能性がある.

・1.00〜6.00m:主として上部はシルト,下部は砂〜砂礫からなる.全体にやや軟質である.2.05〜2.10mおよび4.10〜4.11mに火山灰質シルトが挟在される.4.10〜4.11mのものは灰白色を呈するシルト質な火山灰で,白頭山苫小牧(B−Tm)に対比される可能性がある.3m付近および4.95mにに材化石が認められる.沖積層(完新統)に相当するものと判断される.

★6.00〜27.25m:上部は比較的硬質で均質な暗灰色を呈する粘土質シルトからなり,層厚5〜20p程度の細砂を挟在する.部分的に藍鉄鉱を含み,16.87〜16.90mに腐植物の薄層を挟在する.下部は主として粘土基質の砂礫からなる.礫は安山岩,泥岩,砂岩,頁岩,一部花崗岩等を含む.礫径は5〜30o程度あることが多く,70〜80%の礫含有率を示す.上位の沖積層に比較して硬質で,更新統の下位段丘堆積物あるいは茂世丑層に相当すると判断される.なお,茂世丑層については地形地質調査結果のV.1.1では取り扱いに問題があり使用していない.

★27.25〜30.00m:暗灰色を呈する泥岩からなる.まれに径10〜20oの礫を含有する.55〜70゚の葉理が認められる.新第三系中新統の追分層に相当すると判断される.

CH−4孔(孔口標高:21.60m,掘削深度:25.00m,図3−3−5および図3−3−8

H−3孔の東側72.0mの地点で,断層の下盤側を掘削した.粘土〜シルトについては三重管を用いて,砂〜砂礫については無水掘削によりコアを採取した.本孔については,日の出地区のリニアメント東側(断層下盤側)の代表孔として電気検層を実施した(図3−3−8).

地質構成は,以下のとおりとなっている.

★0.00〜0.75m:径5〜70o煉瓦の円礫を含み盛土と判断される.

★0.75〜6.70m:主として上部は粘土,下部は砂〜砂礫からなる.全体にやや軟質である.2.74〜2.76mに火山灰が,3.22〜3.24mに火山灰質シルトが挟在している.2.74〜2.76mのものは灰白色を呈し,火山ガラスが多く輝石が少ない特徴が認められ,白頭山苫小牧(B−Tm)に対比される可能性がある.5.24m付近に材化石が認められる.沖積層(完新統)に相当するものと判断される.

★6.70〜21.90m:上部は比較的硬質で均質な暗灰色を呈する粘土質シルトと細砂からなり,砂礫を挟在する。下部は主として砂〜砂礫からなり,部分的に層厚15〜100pの粘土〜シルトを挟在する.礫層を構成する礫は,砂岩,頁岩,安山岩,珪質岩等で,礫径は5〜30o程度あることが多い.10.07〜10.09mおよび20.15m付近に腐植物を層状に挟在する.上位の沖積層に比較して硬質で,更新統の下位段丘堆積物あるいは茂世丑層に相当すると判断される.

★21.90〜25.00m:暗灰色を呈する塊状の泥岩からなる。新第三系中新統の追分層に相当すると判断される.電気検層の結果によると,高比抵抗を示す部分は砂礫層に,低比抵抗の部分は粘土〜シルト層に対応していており,深度5〜6m付近の高比抵抗部は沖積層基底の礫層に,深度17〜21m付近の高比抵抗部は更新統基底の礫層に対応している.

DH−5孔(孔口標高:21.97m,掘削深度:25.00m,図3−3−6

リニアメントの最も東側で掘削したボーリング孔で,H−4孔の51.0m東側に位置する.断層東側(上盤側)の地質層序を確実に把握するため,100%のコア採取を目指して無水掘削を行った.

地質構成は,以下のとおりとなっている.

★0.00〜7.25m:大局的には上部は粘土,下部は砂からなる.全体にやや軟質で腐植質である.4.46〜4.75mに火山灰質砂が挟在し,5.40m付近には腐植物が比較的多く含まれている.沖積層に相当するものと判断される.

★7.25〜16.50m:主として上部は細粒な砂からなり粘土〜シルトを挟在する.下部は砂礫からなる.礫は砂岩,頁岩,チャートで,礫径は10〜50o程度のものが卓越する.礫含有率は60%程度で,全体に締まっている.上位の沖積層に比較して硬質で,更新統の下位段丘堆積物あるいは茂世丑層に相当すると判断される.

★16.50〜25.00m:主として暗灰色を呈する泥岩からなる.上部に層厚15p程度の暗灰色砂岩を2層挟在するる.新第三系中新統の追分層に相当すると判断される.