(3)早来測線1

[測線・測定概況]

@測線・測定概況

図3−2−1−16に探査測線図(1/5,000),表3−2−1−6に測線の測量結果を示す.

測線は,東−西に延びる直線上の湯ノ沢−富岡線上に設定した.脇道や自動車の出入口等のために受振器を置けない箇所や横方向にオフセットをつけて受振器を置いた箇所もあった.受振器はすべて直接地面にスパイクで固定し,発振はアスファルト舗装道路上で行った。

本地区の測定に際しては,平均的に交通量は少なかったが,朝,夕の通勤時間帯には交通量が大幅に増えた.また,日中においても測線を工事車両(ダンプ)が通行することがあった.工事車両によるノイズは,振幅レベルが非常に大きいため,工事車両の通行中は測定を中断するなど配慮した.

なお,測線状況を図3−2−1−17および図3−2−1−18(写真)に示す.

A測定仕様

本測定に先立ち,発振周波数,垂直重合数,サンプリング間隔等の測定パラメーターを決定するために,パラメーターテストを実施した.

表3−2−1−5に,採用した測定パラメータを示す。

また,図3−2−1−19に上記パラメータで測定したショット記録を示す.ショット記録上でいくつかの反射波が明瞭に読みとれる.

[データ処理および地質構造解釈]

@データ処理 

データ処理で用いた各種フィルター等のパラメータは表3−2−1−7に示す.また,処理結果は,マイグレーション前時間断面図,マイグレーショ.ン後時間断面図,マイグレーション前深度断面図,マイグレーション後深度断面図として示した.各反射断面における出力形式や縮尺は,岩見沢測線と全く同様にした.

A反射断面の分布状況

図3−2−1−20に解釈を加えたマイグレーション前時間断面図(1/5,000),図3−2−1−21にマイグレーション後時間断面図(1/5,000)を示す.

測線上0〜500mまでの区間の時間0〜200msにおいては,西傾斜の反射面が多数認められる.一方,測線上500m〜1,000mの区間は連続性のよい水平な反射面が時間100ms以浅に多く認められるが,これらの反射面は,測線上1,050mを境にして東傾斜へと変化している.時間200ms以降においては,顕著な反射面は認められない.

B反射断面の解釈

図3−2−1−22に解釈を加えたマイグレーション後深度断面(1/5,000)を,図3−2−1−23に静補正時にタイムターム計算によって得られた表層速度構造を示す.

深度変換は,速度解析で得られた重合速度を考慮して,地表から反射面S−1までは1,500m/s程度,それ以深についてはショットレコードにおける屈折波から得られた2,000〜2,500m/sの速度を用いて行った.

探査地区の比較的浅層部には,新第三系である萌別層とその下位に軽舞層が分布して,その上部には第四系である段丘堆積層,火山灰層および沖積層が覆っていると推定される.測線上300m付近に撓曲構造が,測線1,000m付近に嶮淵断層もしくは馬追断層とみられるリニアメントが空中写真判読,地表踏査により推定されている.

深度断面図の標高0〜50m付近に認められる反射面S−1以浅の領域は,速度解析および静補正計算において,1,500m/s程度の速度値が求められており,この反射面は,第四系と新第三系との境界と思われる.

測線上0〜350mの区間では,反射面S−1は西傾斜しているが,測線上350mから東側ではほぼ水平となっている.しかし,測線上1,050m付近を境として,反射面は東傾斜へと変化し,小規模な背斜構造が認められる.

測線上350m付近および1,050m付近の反射面の傾斜変化は,タイムターム結果(図3−2−1−23)の第2層の上面形状と整合している.両地点とも,地表踏査などにより,撓曲構造や断層等が推定されており,この反射面の傾斜変化はこれら断層などによる構造異常を示唆すると考えられる.ただし,マイグレーション処理の影響を考慮すると,どちらも実質的な測線の西端および東端に近く,品質低下領域に当たることを勘案する必要がある. 

反射面S−1以深は,顕著な反射面が得られていないためはっきりしたことはわからない.これは,表層付近に厚く堆積する第四系(段丘堆積層,火山灰層および沖積層など)により,地震波のエネルギーが大きく吸収されて,地震波が地下深部まで透過していないことや有意な反射境界が深部までないことなどが考えられる.