(5)5M(廿日市から宮島にかけての測線)

図5−23に深度変換後の反射断面を、また図5−24にその解釈図を示す。

本測線は、宮島の存在によってSP100から120にかけて基盤岩上面を示す反射面の盛り上がりが認められる。廿日市・宮島間は谷状を呈し、最深部の深度は120mを示す。谷のなかのSP180〜200間には盛り上がりがあり、その上位の更新統と考えられる層の反射が不明瞭となっている。宮島より東側では基盤上面が比較的激しく起伏しながら次第に深くなっており、SP60より東でほぼ深度100mを示す。更新統上面と推定される反射面は、SP30、180〜200、240などの地点で不明瞭になるが、測線全体にはほぼフラットである。

以上、マルチチャンネル探査により、更新統と推定される地層の分布並びに基盤岩上面深度とその形状を明らかにすることができた。基盤岩上面は、測線全体にわたって尾根と谷をなすような起伏を繰り返しており、尾根状の高まりの一部が現在の島として海面上に突き出ているようである。谷の最深部は4M測線のSP480付近で約180mを示す。全体に基盤岩の分布を規制しているような大きな不連続面やシャープな変位面は認められない。1M測線では、三角州堆積物の下で東から次第に基盤岩上面と考えられる反射面が深くなっている様子がうかがわれるが、太田川放水路付近で再び盛り上がり、断層を予想させるようなシャープな基盤深度変化は認められない。

この結果、陸上の活断層の海域延長部には、堆積層を変位させる明瞭な断層変位は認められないことが明らかとなった。

したがって、陸上で確認された活断層の長さは、それぞれ陸上部のみに止まる可能性が大きいと判断された。しかし、陸上部の活断層が活動度の低いものであり、変位は横ずれ成分が主要であるため、ソノプローブ音波記録やマルチチャンネル解析結果に必ずしも明瞭に表現されないことも考慮しておく必要はあろう。