(2)解析作業

観測により得られた音波探査記録は、アナログ信号がデジタル探査装置で数値化され磁気テープにデジタル記録として収録されたものである。こうしたデジタル記録はデータ処理により(a)S/N比の向上、(b)疑似情報の除去、(c)見掛け構造の矯正などが図られ、高分解能のアナログ記録断面図に変換される。これら(a)〜(c)に対する具体的な対応は、

(a):CDP重合による反射信号の強調

(b):デコンボリューションによる歪んだ波形のパルス化及び多重反射の除去   

(c):マイグレーションによる真の構造への復元

などが挙げられる。

データ処理の内容は、重合処理、マイグレーション処理及びマイグレーション記録の深度変換処理に大きく分けられる。各段階における実施内容をまとめると以下のとおりである。なお詳細については別冊資料編を参照されたい。

・重合処理:CDP重合(水平重合)を施し、発振点と受振点とが一致するトレースからなる時間断面を作成する。このために、発振時間補正やノイズ除去のための10〜400ヘルツの帯域通過フィルターを処す。各トレースを水平方向にたしあわせて、位相が揃っている反射波は加算され位相が異なるランダムノイズはお互いに打ち消されることによってS/N比が向上した記録を作成する(図5−14の左図フロー参照)。

・マイグレーション処理:重合処理記録断面図に描かれた構造は、歪みを受けた見掛けの構造を示している。たとえば反射面が傾斜している場合側方からの反射を真下の情報として表示するし、また孤立した反射面では回折波が発生し双曲線状の疑似反射面が現れる。こうした見掛けの構造を矯正し本来の正しい空間的位置に戻す操作を行う(図5−14の右図フロー参照)。

・深度変換処理:時間断面を地層速度より深度断面に変換する。深度変換に使用する速度関数は、以下のとおり本調査による4M測線の速度解析から抽出した。

時間(msec) 重合速度(m/s) 区間速度(m/s) 深度(m)

   0       1500  1500    0

   60      1500  1500    45

   200     1900  2048    188

   300     2050  2321    304

   500     2350  2739    578

   700     2650  3282    907

   1000    2975  3622    1450