(1)現場作業

探査は、音波探査装置、音響測深機及びGPS(測位機)を196トン(船長36.5m)の探査船に設置し、音源のエアガンと音波探査装置の本体に連絡する受波器(ストリーマケーブル)を曳航して行った。図5−13に探査の概要図を示す。探査船の速度は約3ノットに保ち、12.5m間隔で音波を発振・受波を繰り返しながら測線上を航行する。音源から発振された音波は、海底面、地層境界面などで反射し、再び海面に戻ってきてストリーマケーブルで捕捉される。曳航されるストリーマケーブルは、波浪、スクリューなどの雑音を避けるためできるだけ船尾から離し、海面下5mに沈める。

ストリーマケーブル全体の構成は、船尾から順にトーイングリーダー(水中に沈めるためのもの)、音波を受波するアクティブセクション、及び安全航行のためのテールブイからなる。アクティブセクションは12.5m間隔で配置される24組のセクション(チャンネル)からなり、各セクションには5個の圧電型受振素子が格納されている。また深度計と深度調整装置が1ch、12ch、及び24chの3個所に装着され、常時一定深度になるようモニタリングと調整が行われる。受波された反射波は、記録部でアナログ信号からデジタル信号に変換されたあと磁気テープに収録される。航行中は、探査船にもっとも近いチャンネルからのアナログ信号をモニター記録器に連続的に出力させると共に、デジタル化した発振ごとの全チャンネルの反射信号をパソコンのディスプレーに表示させてモニタリングした。以下に船位測定と発振についての方法を述べる。

・船位測定

船位の測定は、GPS受信機を探査船移動局(リモート)と陸上固定局(ベース)の2局に設置するディファレンシャル方式GPS(DGPS)で行った。すなわち、同じ衛星のデータを2つのGPS受信機を用いて受信し、既知の位置に設置したGPS受信機の真の位置との誤差を求め、この誤差を他のGPS受信機の位置に当てはめて精度をあげる方法で行った。これにより船位は精度1m以下で求めることができる。今回の固定局は廿日市の阿品付近の次の地点に設置した。

座標系 :3系

座標値  X:−185341.20

       Y: 14436.82

高さ :+7.68m

所在地 :田尾

・発振装置

発振装置にはエアガンを用いた。エアガンは、シャトル(ピストン)で密封された上・下部空気室に圧縮空気を蓄え、電磁弁の空気流路が送信機からの起動信号で開くと上部空気室の圧縮空気が抜け、シャトルが高速で上方に作動し、シャトルで密閉されていた下部空気室が開かれ一気に圧縮空気を放出する。放出された圧縮空気は、膨張・収縮を繰り返し、強力な低周波の音波を発生する。下部空気室の圧縮空気が放出された後、電磁弁が閉じ、シャトルは押し下げられ下部空気室を密閉し再び圧縮空気が蓄えられる。エアガンに使用する空気は、145kg/cm2 に圧縮された圧縮空気をエアボンベに貯留し圧力調整器(マニホールド)によって130kg/cm2 に調整されエアガンの空気室に送られる。起動信号は、DGPSより12.5mごとにファイヤリングユニットを通じてエアガンの電磁弁に送られ、これを作動させる。エアガンにはハイドロフォンが着装され、発振信号を船上のオシロスコープで監視するとともにデジタル探鉱器により磁気テープに収録する。

今回の探査で使用した主要機器を表5−2に、また観測条件を一覧にして表5−3に示す。