5−3−1 調査概要
マルチチャンネル音波探査は、上記ソノプローブに比べてより深部の地質構造を調査するのに適用される。本方法は発信源は1つであるが、受波器を複数(マルチ)配置して海底下から反射してくる音波を捉え、深部から反射してくる弱い音波も各受波器の記録を重ね合わせて(重合)処理することによって、より鮮明な反射断面を得るものである。深部まで音波を届かせるために発信源には高圧空気を利用して水中に音波を発生させるエアガンを用い、反射による減衰の少ない波長の長い10〜400ヘルツの音波を使用する。マルチチャンネル音波探査による断層での調査事例を図5−12に示す。海底下深部での断層の発達が明瞭に示されている。
今回の調査では、ソノプローブ音波探査では届かない更新世の砂礫層やさらにその下位の基盤岩の上面形状を把握することにより断層の存在を確認する目的で本探査を適用したものである。なお本探査は1波長が数mと波長の長い音波を用いるため、得られた結果は10m程度の精度と考えられる。すなわち断層による10メートル単位以下のわずかな変位については本探査結果では議論できない。