4−4−4 断層変位量と変位の向き

ここでは、断層両側の基盤のずれから変位量を求めた。まず、垂直方向の変位量は、S面の基盤において、相対的に西側が落ち込むかたちで、約20cmの垂直変位がみられる。N面については、写真・スケッチ図では、断層西側の第W層が相対的に約1.5m落ち込んでいる。しかし、この第Y層を除去したところ、約50cm北側に基盤壁面が現れた。この基盤線(面)のレベルは、断層東側のそれとほぼ同じであった。約1.5mの落ち込みは、横ずれ変位に伴う見かけ上の変位量と思われるため、第Y層除去後に現れた基盤のレベルを採用した。よって断層の垂直変位量は20cm程度と推測される。

水平方向の変位量は、先述の第Y層除去後の基盤面が、断層東側の基盤より北に50cmずれていることから、水平変位量は50cm以上と推測できる。

これらは、この断層の最新活動に伴う一回の地震変位量であると考えることができる。

また、N面の断層面には、断層が動いた時に形成されたと推定される擦痕が観察でき、その方向は約18°北落ちであった(図4−20)。五日市断層の動きは、相対的に西側落ちの変位を示しながらも、沢の屈曲などから判断して水平成分(右横ずれ)がこの断層の変位の主体であると考えられる。